2003年5月31日 電気屋さんのぼやき

きのうのエアコン取り付けは、けっこうな大仕事でした。 かかった時間がなんと5時間以上! いくら2台とはいえ、こんなにエアコンの取り付けに時間がかかるとは思いませんでした。
べつに電気屋さんの働きぶりが緩慢だったわけじゃないんですよ。 時間がかかったのは、室外機2台用の置き台の設置工事まであったためです。 それにこの方の仕事は、実に丁寧でした。

うさぎは、自分は働くのが嫌いなクセして、人が働いているところを見るのは大〜好き! なので、5時間ずっと電気屋さんに張り付いて、エアコンの取り付け方を見学していました。 ネネとチャアもいて、3人で電気屋さんを取り囲むように見学していました。
この電気屋さん、頭もよく回るし、手もよく動く方でしたが、 ついでに口の方もよく回る方でした。
「な‥なんか一家総出で見学されてもなあ〜」と言いつつ、一つ一つの工程について、 説明しながら作業してくれたので、ちょっと勉強になりました。

さて、我が家における電気屋さんの最初の仕事は、古いエアコンの取り外しでした。
「エアコンのとりはずしなんて、簡単だと思うでしょ? 実際そう難しいことじゃないんですよ。 室外機と室内機を結んでいる管や配線を切断すりゃいいんだから。
でもね、それをやる前に、室外機のガスの元栓を締めるのを忘れちゃダメです。 これをやらないで管を切断するとどういうことになるかってぇと、ガスが漏れちゃう」
「ガスってもしや、フロンガスのこと?」とうさぎ。
「そうそう、フロンガス。で、フロンが漏れるだけじゃないのョ。 触媒になってる黄色いオイルが一緒に漏れる。 するってぇと、管からスプレーみたく、黄色いオイルがフロンと共に噴き出すわけ。 で、もうあたり一面真っ黄色に染まっちゃうわけよ。 コレ、DIYとかが得意な人が陥りやすい落とし穴ね」
なるほど〜! これは聞いといてよかった。うさぎなんかモロやりそうだもの。 "なーんだ、こんなん簡単じゃん!"とか言って、いきなり管をチョッキンと。
ちなみに、 最近まで使用していたエアコンの管を切断する場合は更に注意が必要なのだそうです。 なぜって、管の中にもガスが入っている可能性があるからなんですって。

そのあと、いよいよ新しいエアコンの設置です。
「これもさあ、すでに壁についてるボルトにエアコンひっかけて、 すでに開いてる壁の穴に管を通すだけ。 簡単だと思うでしょ? ところがこれがけっこう厄介なのョ。 だってさあ、これ、エアコン取り付けのベースになる金具ね。 これ、水平だと思う?」
うさぎはちょっと下がってみました。
「ううん、左が下がってる。かなり下がってる」
「でしょ、でしょ? どうしてだか分かる? もともと壁に打ってある2箇所のボルトの高さが違うからョ」
‥確かに。左右のボルトの高さが1センチくらい違う!
「‥でもね、奥さん、おたくはまだいい方よ。 金具の位置を調整するだけで済むから。まあ、平均的な出来ね。 左右のボルトの高さがぴったり同じ建物なんて滅多にないんだから」
「でも、じゃあもっとひどい場合はどうするの?」
「穴のある方が低い場合は、まあそのまま多少ナナメにつけちゃっても、問題ないんですよ。 エアコンから出た結露水がスムーズに外に出るから。
でもさ、問題は穴のある側が高い場合だよね。 コレ、水が流れてかないから、ベースの鉄板に穴あけ直すしかないですね」

「しかも、問題はボルトの高さだけじゃないんだ。 管を外に通す穴ね、これが外の方が低くなってなきゃならないのに、 内の方が低くなっちゃってるひっで〜物件がときどきあるんだよな。 するってぇと、当然、エアコンから出た水は外に流れてかないよな」
「そういう時ってどうするの?」とうさぎ。
「どうにもならないよ。 一戸建てなんかだったら穴を開け直さしてもらうこともできるけど、 集合住宅の場合、共有部分の外壁にまさか穴を開け直すわけにはいかないもん。 "おたくには付けられません"って言って帰るしかないよ。
駅の向こうにある市営の団地、知ってる? あそこなんかヒドイもんよ。 あそこはさ、全く同じ見た目の5棟くらい並んで建ってるでしょ? だけどさあ、1棟1棟、全部別の建設会社が建ててるんだよね、実は。 で、中に一棟、ひっでえのがあってさ、 ボルトは極端に高さが違うわ、穴は内側が高いわで、もぉどうにもならないわけ。 それで"ここは無理! こんなひどいの、ガマンしてることないよ。 市公社に文句つけてやれ"って言って帰ったら、お客さん、その通りにしてさ、 結局壁全部取り壊して建設会社に工事をやり直させたってさ。 ああいうのは、黙ってちゃダメだよな」

さて、下地の鉄板はつきました。でも、エアコンの取り付けはまだ。 エアコンからは、いろんな管が飛び出しています。

  1. 排水用のプラスチック管
  2. 室外機から冷媒用のガスを取り込む太い銅管
  3. 室外機へと冷媒用のガスを送り返す細い銅管
  4. 室外機に電気と信号を送るワイヤーケーブル3本

エアコンを取り付けるのは、これらを一纏めにして、 穴から出す準備をしてからなのだそうです。 電気屋さんは、下地の鉄板から穴までの角度と距離を測り、 床に置いたエアコンからみてそれと同じ位置に、ビニールテープの丸い輪を置きました。 「えーと、ここに穴がくるから‥もう少しこっちに曲げて‥と」
穴が近すぎて、カーブがきついので、曲げるのが難しいと電気屋さんは言います。 ただ曲げるだけなら簡単。だけど、ヘタに曲げると、 銅管がそこだけ細くなり、亀裂が入ってしまう。 そうなると、そこからガスが漏れる危険性があるのだそうです。
折らないように、電気屋さんは、ゆっくりゆっくり銅管をまげていきました。 余った銅管でうさぎも試させてもらったけど、確かにこれ、すごく難しい。 ちょっと力を入れすぎると、すぐにカクっと折れてしまいます。 一度そうなってしまったらあとの祭り。慌てて戻しても、もう遅い。 銅管というのは、一度折れてしまったら、亀裂が入って、二度と元には戻らないのですって。

エアコンから出した管の束をまずU字に曲げて穴の上までもっていき、 そこから手前にまた曲げて、穴に入るようにする。 この作業にはけっこう時間がかかりました。 二つのエアコンについてそれが終わった時点ですでに2時間が経過。 これからが室外機の設置です。

室外機の設置には、まずそれ用の置き台を組み立てなくては。 そして、その置き台の下に大きなコンクリの台を置き、 太いボルトで固定しなくてはなりません。 室外機はかなり重量があるので、そうでもしないと倒れてしまいます。
本当は、一台は天井から吊ることにすればもっと簡単なんだけれど、 エアコンを吊るためのボルトはベランダのど真ん中にあって、 そんなところからエアコンが垂れ下がってきたら圧迫感がありそうで、 うさぎは絶対にイヤだったの。 それで、費用は8000円ほど余分にかかるのだけれど、2台縦置きにすることにしたのです。

でもこれ、本当に大変だった! だって床って平らじゃないんですもん。 水はけがいいように、壁から離れるほど低く作られている。 しかも、ちょうど段差までがあって、うまく収まらない。 電気屋さんは頭をひねって、段差にプラスチックの置き台をかませることにしました。 そして、念のため、外壁にボルトを埋め込んで、そこに固定。 ホントは外壁に穴開けちゃいけないんだけどね。外壁って共用部分だから。 でも仕方がない。開けた穴から雨水がしみこんだりしないよう、穴には 充分にシリコンを注入してもらい、 そこにボルト固定用のソケットを埋め込んでもらいました。 最初、何にも分かっちゃいないうさぎは、 「床に穴開けて固定するんじゃダメ?」って言ってみたんだけれど、 防水上、それはとんでもないことなんですって。

室外機の置き台の設置に2時間近くかかり、 ここからやっと室外機の設置、そして室内機から出した管の束との接合です。 電気屋さんは管の束を丁寧にテープで巻いて化粧を施しました。 2本の銅管はもともと断熱材でしっかりとくるまれています。
――どうしてだか分かる?
うさぎは初めて知ったのだけれど、 室外機って、熱を排出するためにあるわけではないんですって。 空気を冷やしたり温めたりする仕組みの大きな部分を担っているんですって。
で、室外機と室内機を結ぶ2本の銅管は、 外気温とはかけはなれた温度の冷媒ガスが行き来する道なので、 断熱材でくるまなければならないのだそうです。 エアコンから出る管が太いのは、管自体が太いわけではなく、分厚い断熱材のせい。 管自体は、太い方の管でさえ、外径7〜8ミリ程度なのでした。

電気屋さんがとても手際よく化粧テープを巻いていくのを見て、うさぎたちは感心し、 尋ねました。
「エアコン取り付けの仕事ってどのくらいあるんですか?」って。
そしたら、なんとビックリ!
「そうねえ、今日は午前中に2軒回って、お宅で2台取り付けて、このあともう一軒回るんだ」 ですって!
「そんなに!」ってびっくりしたら、 「あら、今はまだ5月だからいい方よ。これが6月から8月ともなると、 30日、40日は休みナシで毎日6〜7軒は回るから。 だいたい一年で600台から700台はとりつけてますね」
どひゃ〜〜〜っ!
「だからかわいそうなのは子ども。 うちの子、夏休みにどこへも連れてってもらったこと、ないんだよねー‥」
‥思わず絶句。なあんてかわいそうなんだ‥。

「でもね、仕事はいいのよ、仕事はっ!
腹が立つのは親戚ね。親戚はさあ、やれアンテナが壊れたの何のって、 すぐ人のことを呼びつける。で、手間賃が出ないのはまだいいとしても、 材料代くらい払ってくれるかと思いきや、コレが払ってくれないんだよ〜!
この間もさ、"材料代くらい払ってくれなきゃ、行かない"って言ったら、 "それは出すから"って言うから行ったんだよ。そしたらさ、 出てきたのはなんと、おにぎり3個とモンブランのケーキ一個! "材料代は?"って言ったら、"それはもうおにぎりで払った"とか言われてさ〜。 騙された!と思ったね。
しかも、親戚だけで済みゃあまだしも、"親戚の知人"とかにまで呼ばれてさあ、 "頼む! オレの顔を潰さないでくれ! 今回だけだから"とか伯父に言われて、 うっかり行こうものなら、もうその家の専属電気屋にされちまう」
ああ、それって分かる分かる〜! ありがちよね〜!
うちのきりんは、うさぎのママ・ままりんのお抱えシステムアドバイザー、 うさぎの妹の亭主は、ままりんのお抱え金融コンサルタントですもん。 おまけにままりんたら、親戚にまで、 「何かあったときにはうちの娘婿が‥」なんて勝手に言い触れ回って請け負ってるし。

そうこうするうちに、日はとっぷり暮れ、ようやく仕事の方も終わりました。 初めてエアコンを取り付ける場所の電圧をチェックして最後にコンセントにつなぎ、 試運転が上手く行ったのを確認して、ようやく終了! 本当に思わぬ大工事でした。

ところで、電気の配線工事にはそれ用の資格が必要ですが、 エアコンの取り付けには資格って必要なんでしょうか? その辺も聞いておきました。そしたら、
「エアコンの取り付けには資格は必要ないです。 でも、エアコンの取り外しには、"資格"はいらないんだけど、 フロンガスの取り扱いに関する講習会を受講する必要があってね、 で、この講習会ってのは各電器メーカーが主催するんだけど、 受講料が2万円くらいするんだ。しかもさあ、2日の講習受けるのに泊りがけ! 泊る宿とかも決まってて、更に宿代・食事代まで別に取るんだよ! わざわざ熱海とか、そういうところで開かれてさ。 あれ絶対、メーカーと宿が結託してるよなー」
なんですと。う〜ん、大変!

電気屋さんがお帰りになったのは夜の7時半。 そのあとうさぎは急いで夕食の支度にとりかかりました。
献立はギョーザ。 エアコンの管を通す穴の隙間につめる詰め物がギョーザみたいだったことから、 急に食べたくなり、子どもたちに手伝ってもらって大急ぎで作って食べました。 美味しかったです♪

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ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
最後に、エアコン理解度テストを行いたいと思います。

正しいと思う項目すべてにチェックをいれてください

  

さあ、結果はいかがでしたか?
判定結果について、皆と熱く語り合おう!