今回の旅行はタダでさえ心労が多いというのに、 成田のターミナルまでがいつもとは違う第一ターミナル。 ハワイ旅行以来10年ぶりだったので、地理に不慣れでちょっぴり不安だった。
一番ショックだったのは、不案内ゆえ、マクドナルドが見つからなかったこと。
空港でマックに寄るのがいつもの慣例となっているので、
この手順を踏まないと、どうも気持ちが落ち着かない。殊にチャアが不機嫌になる。
こういう儀式にこだわるのは、大人よりもあんがい子供のほうだ。
いつもの儀式を経ないと不安らしい。
お気に入りのタオルケットを握りしめていないと眠れない、というのと同じ理屈である。
時おりしも夕食どき。そろそろお腹も空いてきた。 「仕方がない、どこか他の店を探して腹ごしらえでも」とうさぎが言った途端、 放送が入った。 「出国ゲートが混雑することがあるのでお早めにゲートにお入りください」と。 時計を見ると、まだ搭乗まで1時間半もある。 だけどなんだか気が急いて、出国ゲートへと向った。
出国してからも、食事を取る場所くらいはあるだろうと思っていたのだが、それは甘かった。 片道1キロほどもある長い長い触手を端から端まで歩いてみたけれど、 軽食の店が何軒かあったものの、時間が遅いせいで、すべて売り切れ。 時間が遅いといったって、まだ夕方の6時台なんですけど‥。 おかげで空き腹を抱えたまま、飛行機に乗る羽目になった。
今回の飛行機は、シンガポール航空。世界で1、2を争う人気の航空会社である。 機内食も美味しいと聞いている。 まあ、味はともかく、一刻も早く機内食を出して欲しいものだ――と心の中で願っていたら、 本当にその通り、子供用の機内食がびっくりするくらい早く出てきた。
チャイルドミールというのは、うさぎが知る限り、どこの航空会社も似たり寄ったりである。 スパゲッティとウィンナ(またはハンバーグ)、それにフルーツ。 要するに地上のレストランのお子さまランチのメニューの定番と同じなのだ。 機内食の美味しさで世に名高いシンガポール航空も、チャイルドミールに関しては ご多分に漏れず。量も、ごく普通。
実を言うと、チャイルドミールの量が少ないのではないかと予想していた。 だってこの機内食、規定では7歳までとなっており、 ダメ元で2人分のリクエストを上げたら、 "量が少ないけれど、本当にこれでいいのか"とダメ押しされた経緯があったからだ。 だけど実際には、味も量もごく普通だった、というわけ。
大人の機内食も、比較的早くに配膳された。
しかもうな重! うなぎが柔らかくて、ご飯がこれまた"ちゃんとしたご飯"だった。
飛行機の中でいままで食べたご飯の中で、白米としてはダントツに美味しい!
我が家で食べるご飯に比べたらそりゃあ多少は落ちるけれど、
飛行機の中で食べるご飯としては、抜群に美味し〜い♪
これが日系の航空会社ではなく、シンガポール航空の機内で出てくるというところが
解せない。
飛行機の中でだって、こんなにちゃんとしたご飯が出せるんじゃないの!
しっかりしてよね、日系航空会社各社!
と、思わず激を飛ばしたくなってしまう。
さて、シンガポール航空の高い人気の元は、機内食の美味しさのみならず、
スチュワーデスさんの質の高さにもあるらしい。
なるほど、スチュワーデスさんたちは、マレーの民族衣装をアレンジした
エキゾチックなユニフォームに身を包み、笑顔で乗客に接していた。
紺、赤、緑、地位によって決められているらしい色のバリエーションが楽しく、
体の線にぴったり沿うそのフォームがなかなかセクシー。
もっとも、笑顔が素敵な彼女たち、細かいことは気にしない性分らしい。
最初のアクシデントは、搭乗直後、荷物を棚に入れていたときだった。
うさぎと背中会わせになって、
天井近くの収納にやはり荷物を上げていたスチュワーデスさんが、
荷物をしまったその反動で体のバランスを崩し、うさぎにぶつかってきた。
「アウチ!」びっくりして後ろを振り返ったら、
当のスチュワーデスさんは気にも止めていない様子。
すでに別の荷物をしまう算段に取り掛かっていた。
次のアクシデントは、夜中にうとうとしていたときだった。
ガツン!「あたっ!」朦朧とした頭に何かがぶつかった。
一体何?!と思って目を開くと、
何ごともなかったように平然として立ち去るスチュワーデスさんの後ろ姿が‥。
3度目のアクシデントは真夜中、機内のライトも消え、乗客が寝静まっていたときのこと。
「エコノミー症候群にかかっては大変」と、足の曲げ伸ばし体操をしていると
そこに、飲み物を運ぶカートが‥。
「ギャッ!」気付いたのが一瞬遅く、足の指をカートに轢かれてしまった。
けれどカートを引いていたスチュワーデスさんはそれに気付いた風もなく、
カートと共に去っていったのであった‥。
シンガポールへは前回行ったので、少しはその雰囲気が分かっている。
日本人と顔つきはそっくりだけれど、どこかとてもドライな人たち。
痛みが治まると、「やっぱり"らしい"なあ」と可笑しくなった。
だけど、できることならこれは、前回のシンガポール旅行時に体験したかった。
今回はブルネイに行くんだもの、できれば飛行機の中でもブルネイらしい体験がしたい。
きりんはゼルダ、チャアはカービー、ネネはマリオ、うさぎはテトリス。
シンガポール航空の第3の魅力、コンピュータゲームに一家4人並んで嵌まりつつ、
うさぎは「前回やりのこした宿題を、今ここでやっているようなものだな」と感じていた。