トルコ語

図書館の貸出票

 わたしの住む地方自治体では、図書館で本を借りると、写真のような感熱紙のメモをもらいます。貸し出し状況が記載されたレシート大の印字票です。

 通常こうした紙片は、意識的に破棄するか、いつの間にかどこかへ行ってしまったりしますが、借りた本のしおりとして使うこともあります。そしてそのまま本と一緒に返却してしまうことも。図書カード番号の下四桁以外、個人情報は書かれていないので、扱いは割とぞんざいです。

 新しい本を借りたとき、前に借りた人の貸出票が挟まっていることもよくあります。今借りている「トルコ語文法ハンドブック」にも、3枚ほど挟まっていました。やはり他の人もしおりに使うらしく、ページ数が多い本ほど、貸出票もよく挟まっています。

 人が置き忘れたこの紙片を見るのが、わたしは好きです。なぜなら、その人がその本を借りたとき、同時に借りていたほかの本の書名を見ることができるからです。

 同じ本を先に借りた先達の読書傾向は、自分と似ている可能性が高い。次に読む本を探すヒントになります。

 今回挟まっていた貸出票にも、興味をそそられる書名がありました。「遊牧の世界」です。

 早速図書館の蔵書検索をかけ、予約を入れて、読みました。

 面白かったです。yörük(ユルック)と呼ばれるトルコ系遊牧民の暮らしぶりを描いた本でした。

 先達の貸出票を見なければ、この本に出会うことはなかったでしょう。最近出た本ではないし、話題になった本でもないし。貸出票がくれたご縁です。

 20年ほど前に公開されたジブリの映画「耳をすませば」では、主人公は図書館で借りる本の図書カードにいつも同じ名前を見つけ、それがロマンスへと発展します。

 当時は蔵書情報の電子化がさかんに行われていた時期で、図書カードがバーコードシステムへと取って代わるのを、主人公が残念に思う場面がありますが、電子化を終えた今もなお、借り手同士の交流は、まだ生まれる余地を残しています。貸出票の書名が繋ぐ絆によって。

 名前が分からない以上、ロマンスまでは無理かもしれませんが、ファンタジーは生まれる。

 この貸出票の持ち主は、一体どんな人? 女性? 男性? 若者? それとも年配かしら?って。

 いずれにせよ、いい本を紹介してくれて、ありがとう。

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