2004年3月20日 おみやげ / バリ旅行記(その25) イブ・ワヤン

ランカウイマグネット

チャアときりんがランカウイから帰ってきました。 上の写真は、ネネにと買ってきたおみやげのマグネットです。 ネネはマグネットを集めていて、これでコレクションがまた一つ増えました。

おみやげはもともとあまり買わない我が家ですが、 それにしても今回は、うさぎもビックリするほどの少なさ。 お金を出して買ったものといえば、ネネへのマグネットとチャアのキーホルダー、 あとは、現地のスナック1袋と、 帰りの機内で慌てて買った友だちへのお土産がほんのちょっと。

「お金で買うおみやげはいらないから、ママの誕生日プレゼントに、 とにかく写真をいっぱい撮ってきて」とチャアに事あるごとに頼んでおいたのに、 案の定、遊びに夢中になって、そんなことはすっかり忘れてしまったようです。 メモリチップの大半を占めていたのは、きりんが撮ったチャアのポートレイト。 それもいいけれど、現地の雰囲気はいまいちわかりません。

いくらなんでも寂しいなあ、と、 ツアーのオマケについてきたバティックのハンカチをさすりながらがっかりしていたら、 きりんが旅行記を書きはじめてくれました。 何より嬉しいおみやげです。最後まで書いてくれるといいなー。

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【 バリ旅行記25 イブ・ワヤン 】

きのうの続き

アラムジワに絵を見せに行き、再びダギング先生のもとに舞い戻ると、 この家の主であるクリンティング氏も帰ってきていた。 そして、いま一人、おっとりと落ち着いた風情の女性が。

うさぎはそれが誰だかすぐに分かった。

イブ・ワヤン(ワヤン母さん)だ!

イブ・ワヤンはウブドでは有名な女性である。 人気レストラン、カフェ・ワヤンのオーナーとして、 或いは、ラカレケ料理教室の先生として、 様々な形でガイドブックなどにも載っている。 世界各国で料理の修業を積んだ名コックにして いくつものレストランやホテルを経営する実業家。 いわばウブドの立志伝中の人物である。

うさぎもバリに来てから、彼女に一目会いたいと思っていた。 なぜって、アラムジワやカフェワヤンのスタッフたちの表情に、 求心力の存在を感じていたから。 もちろん、イブ・ワヤンその人こそがその求心力に違いない。 今まで見てきたアラムジワ系列のスタッフたちは、何をするにもみな生き生きしていた。 それはきっと、イブ・ワヤンのもとで働くことが嬉しいからに違いない。 いつのまにか、まだ見ぬイブ・ワヤンは、うさぎの憧れの人になっていた。

そのイブが、そこにいた!
うさぎは心臓がドキドキバクバクいいはじめ、頬が紅潮していくのを感じていた。 憧れの人物を目の前にして、 「留守中にお邪魔しておりました」とは英語でなんと言うのか、そればかり考えていた。

イブは、想像していたよりも小柄だった。 想像していたよりも、物静かだった。
多くのスタッフを束ねる求心力になりうる人とは、 女性実業家とは、どのようなバイタリティ溢れる人であろうかと想像していたのとは 全然違った。
何を言っていいものやら分からず、 「あなたのご活躍ぶりは、日本でも聞いておりました」とありきたりなことを言うと、 彼女は胸の前で手を合わせて丁寧に言った。
「みんながわたしを助けてくれるからですよ」と。

きっとそれは本当なのだと思う。 誰だって、一人で店を繁盛させることはできない。 この繁栄はもちろん、 ご主人のクリンティング氏や、レストランやホテルのたくさんのスタッフたちや、 みんなの力が合わさって作り上げたものだ。

話を続ける中でも、イブ・ワヤンは"誰それがわたしを助けてくれる"という言い回しを よく使った。 ブータンへいかれたのも、ロンボクの店を続けていかれるのも、みんな誰かしらのおかげ。 「みんなが助けてくれるから、自分はここまで来れたのです」と、 イブは噛みしめるように、大事そうに、その言葉を何度も発した。

でもイブ・ワヤン、
皆に助けてもらえる、皆の力を引き出すその根源を、
わたしの国では、「人望」と呼ぶのです。

つづく