China  蘇州

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【 獅子林の太湖石迷路 】

太湖石の迷路

オリエンテーリングの最初のポスト獅子林に、やっとたどり着いた。 平日だというのにものすごい賑わいで、甲高い中国語があっちでもこっちでも響いている。

ここ獅子林は、さほど広くない敷地のいたるところにゴツゴツとした岩が配され、 迷路のように入り組んでいる。 この岩は近くの湖から採取された石灰岩で、「太湖石」と呼ばれるものらしい。 古典園林(=古典庭園)に共通した特徴はいくつかあるが、この「太湖石」の多用もその一つだそうで、 長い歳月のあいだ波に洗われ続けた石灰岩はいずれも深いシワを刻み、 中にはぽっかり穴の開いているものもある。 その風貌は美しいというよりむしろ奇怪な感じを受けるが、 蘇州の人々はこの岩に刻まれた歳月の傷跡をこよなく愛し、競って自分の庭に置いたのだそうだ。

世界遺産に指定されている蘇州市内の八園林すべてに、この太湖石の岩山はあった。 岩山はいずれも、岩の上に登ったり、下をくぐったりできるようになっていたが、 大半は「ミニミニ迷路」程度のもので、道に迷ったりするほど複雑ではない。 だが獅子林だけはなかなか本格的で、迷いたいと思えばいくらでも迷える迷路であった。

とはいえ、出たいと思えばすぐに出られるのも、また事実。 分かりのよい回廊に出る出口があちこちにあるからだ。 また、自分が今どこにいるのか、どこからどう来たのかなどは とっくに分からなくなっているのに、 すでに通った道と、まだ通っていない道の区別が容易につくからである。 どこも似たような岩の道と思いきや、道に敷き詰められた小石の模様が違っていたり、 周囲の植栽が違っていたり、そこから見晴らす景観が違っていたりと、 変化に富んでいるからだ。 だから、同じ道をそれと知らずにぐるぐる回ってしまうようなことはなく、 本気で迷路にハマることはないのである。

同時に、もっと探検したいと思うと、まだ通っていない道がいくらでも見つかる。 それが不思議であった。 登ったり下ったり、この限られた敷地によく、と思うほど、複雑に入り組んでいる。 道という道はすべて歩きつくし、 ありとあらゆる角度からこの庭園を眺めつくそうと思ったら、 休みなく歩き続けても、ざっと2、3時間は楽しめる。

獅子林が最初のポイントだったのはラッキーだった。 古典園林の楽しみ方を知ったからだ。

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