Fiji  マナ島とフィジアン

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【 ココナツ・アイス 】

ココナツ・アイス

レセプションの脇の建物の入口に、アクティビティの予定を書きつけた黒板がある。 それを見ると、今日の予定は、2時から「ココナツアイス」、4時から「カバの儀式」。 アクティビティの多くは、そのすぐ脇のフィジアン・ブレ ――簡素な屋根を乗せた板張りのあずま屋――で行われるようだ。

さっそく2時ごろフィジアン・ブレに行ってみると、やってる、やってる。 でっぷりと太ったフィジアンのオバサンが、10人ほどの子供たちに囲まれて椰子の実を剥いていた。 椰子の実の剥ぎ方は、この間グアムで見たのと同様、尖った棒の先に実を打ちつけ、引っかけて剥く――が、 どうやらうまくいっていないようだ。 グアムで見たヤシ剥きは、ずざざざざーっと一気だったが、体格がいくら良くても、そこは女性、力がないのか、 一回棒に打ちつけてはちょっと剥き、また打ちつけてはまたちょっと‥という感じで、ラチが開かない。 その危なっかしい手つきを見ていたら、なんだかアタシでもできるかも‥と思った。
「わたしにもやらせて!!」と言うと、オバサンは、「この実は良くない」と言い置き、 実をその場に転がして行ってしまった。

そこで、さっそくその実を拾って棒に打ちつけてみたのだが、うーむ、固い!! 棒の先は尖っているように見えたのだが、案外鈍器だ。 そこに引っかけて剥くといっても、まず実の表面に傷がつきもしないのだから、どうにもならない。 結局、ちょっとも剥くことはかなわず、諦めた。

しばらくすると、オバサンは別の実を持って戻ってきた。それを剥くと、大きなシェール(中果皮)が出てきた。 中にはたっぷりのココナツジュース。これは子供たちに渡してくれたので、みんなで回し飲み。 どろだらけの悪ガキたちが飲んだあとだったので、一瞬躊躇したが、結局飲んだ。

そのあと、シェールの内側にぎっしりついた、肉厚の胚乳(コプラ)をみんな手でちぎって食べた。 これも、手を洗っていないのを思い出し、一瞬躊躇したが、結局食べた。 それはちょうどスカスカなスイカみたい、スポンジみたいな食感で、ショリショリしていた。

アイスに使うのは別の実だった。色の黒い大柄な男性が、小振りのシェールを持ってきて、コプラを削りはじめた。 コプラを削る道具も、グアムで見たのとほとんど同じ、鉄でできたギザ歯が椅子の先に付いているものだった。 けれど、その削りっぷりはグアムで見たのとはちょっと違う。 グアムで見たココナツ削りは一種の「芸」だったが、ここでは単なる「日常の仕事」という感じ。 手慣れてはいるが、この芸で皆を驚かせてやろうという心意気はない。鼻唄まじりにのんびりと削る。 それでも子供たちは目を丸くして彼を取り巻き、その手元に見入った。

ココナツを削り終わると、オバサンがココナツをまぶしたアイスを小さな皿によそって皆にふるまった。 フィジアン・ブレの板貼りの床に腰を下ろした子供たちは、みな自分の番を待っている。 オバサンは小さい子から順に皿を配り、そのあと大人にもふるまってくれた。 さっそく食べてみると、アイス自体は普通のバニラだった。 ココナツがまぶしてあるから、これを「ココナツ・アイス」というのだった。

十数人の子供と数人の大人がみんな皿を受け取っても、まだアイスのお代わりがあった。 皿が空になると、ネネはさっそくお代わりを貰ったが、チャアは「どーしよっかな〜?」。 日本語の通じないオバサンに「お代わり」と言う勇気がなくて迷っているのかな、と思いきや、 上に掛けるココナツがなくなってしまうと、突然身を乗り出した。 けれど一瞬決断が遅く、アイスは全部売り切れてしまった。 そうか、チャアはアイスは好きだけれど、ココナツがイヤで迷っていたのね。

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