Fiji  マナ島とフィジアン

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【 フィジーの人々U 】

標識

今日はマナを発つ日。 皆で揃って7時半に起き、一時間かけて最後の朝食をとると、 9時過ぎにはアンケートを書いてチェックアウトを済ませた。 アンケートの「対応のよかったスタッフの名前」の欄には『オムレツ焼きおばさん』と『ユーニス』と書いた。 オムレツ焼きおばさんは、来月もきっと表彰されるだろう。 あの豪快なユーニスがもし表彰されたらと想像すると、ちょっと可笑しい。 子供たちに投票させたら、ユーニスは絶対票を集めると思うんだけれど。

チェックアウトを済ませたら、自分で桟橋へ行き、ビチレヴ島行きの船を待たねばならない。 林の中の道を歩いていると、リネン・ブレ付近の分岐点で、桟橋にはどの道を行くのだったか、 ふと分からなくなってしまった。ここは何度通りかかっても、どうも方向が分からなくなる。 ちょうどそこに女性スタッフが二人通りかかったので
「桟橋へ行くのはどの道でしたっけ?」と尋ねた。 すると、こっちだ、と指をさしたので、礼を言って行きかけると、片方のスタッフが後ろから呼び止めた。
「いい? この道へ行って突き当たったら、左に折れるのよ、それからしばらく道なりに歩いていけば、 すぐ桟橋に着くから。分かった?」彼女は厳めしい顔つきで、けれど丁寧に教えてくれた。

うさぎが彼女に会うのは初めてではない。昨日、ビーチタオルを借りに行った時、リネン・ブレで会ったのだ。 その時も彼女は厳めしい顔つきで言ったものだ。
「いい? 使いおわったビーチタオルはここに返却しにくるのよ。 もしまだ使うんだったら、ブレの玄関の物干しに掛けておくの。分かった?」 その時は何だか叱られているような気分になったものだが、今にして思えば、 これもきっと親切で教えてくれていたのだ。 表情が険しくてニコリともしないから、怒っているように見えるけれど、根は親切なのだ。

マナを去るその日にして分かった。どうしてここの人たちが笑わないのか、無愛想なのか。 それは決して、人を軽んじているからでも、嫌っているからでもない。 単に、「人に笑いかける」という習慣がないからなのだ、と。

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