 
	ステーキを食べおわった後、うさぎは流星群を見にいくことにした。昨日、カブキさんが言っていたやつだ。 今回の流星群は東の空に降るそうで、部屋からは見られない。 長い一日の後で疲れてしまったきりんは部屋にいるというので、うさぎはネネとチャアを連れて建物の外に出た。
ロータリーのところで空を見上げていると、また車がすいっと近づいてきて脇に止まった。 ここで星空を見上げてすぐ部屋に帰るつもりが、やはり車に寄ってこられるとつい乗ってしまい、 クラブハウスまで行ってしまった。
クラブハウス前の、湖に張り出したテラスの上でしばらく東の空を見上げてみたが、どうも流れ星はうまく見つからなかった。 どこをどう見たらいいのか、「見方」が分からないのだ。そこで、カブキさんを呼んでくることにした。
カブキさんはすぐに見つかった。そして、快く付き合ってくれた。 どの辺を見ればよいのか、どの位の割合で降るのかを聞きながら、カブキさんと一緒に夜空を見上げると、 しばらくして、流れ星を目で捕らえることができた。そしてまた一つ‥。やっぱり流れ星にも「見方」があるのだ。
	結局うさぎは1時間のうちに4つくらい見た。ネネはもっと多くて9つ。カブキさんはもっとだ。
	同じ夜空を眺めてこの差は、視力の差なのか、集中力の差なのか。
	「ママ今の、見えた? あっちからす〜っと来たやつ!」とネネに言われても、
	「え〜? 今? たった今? ‥いや、見なかったけど」と返すことの多いうさぎ。
	「ねえ、カブキさんは見たでしょ、見たでしょ? 今流れたよね?」と言うネネに、カブキさんは
	「ええ、見えましたとも。東の方から長ーい弧を描いていきましたね」と受けてくださる。
	「ほらごらん。ママったら見なかったの〜?」と得意顔のネネ。
	チャアもネネに負けてはいられじと、
	「見えた! 見えた! チャアも見た〜!」と頭の上で人差し指を振り回して大騒ぎするけれど、うさぎにはお見通し。
	おそらくチャアは流れ星がなんたるかも分かってはいまい。ただ皆と話を合わせているだけだ。
	
	流れ星を探しながら、カブキさんは星や星座の説明をしてくれた。
	カブキさんの解説付きで見上げると、夜空をいくら見ても見飽きることがなかった。
	カブキさんは星座の本までもってきてくれて、ネネに貸してくれた。
	ネネは大喜びで、イルミネーションの灯りを頼りに本に見入り、夜空と見比べた。
	そうして一時間も夜空を見上げていたら、オリオン座のペテルギウスやおおいぬ座のシリウス、それにカペラなど、
	南の星座や一等星の見つけ方をいくつか覚えてしまった。
	「明日の晩は、ラクエスタでスターウォッチングがありますから、見にきてくださいね。
	本はその時に返してくれればいいです」とカブキさんが言った。皆はカブキさんに明日の晩の約束をして、部屋に帰った。
	
	部屋に帰り着くと、
	「星を見にいったまま一時間も帰ってこないから、どうしたのかと思った」と、留守番のきりんが言った。
	
部屋に帰っても、ネネはまだベッドの上で星座の本を見ていた。 あわよくば、これを機会に自然科学への興味が膨らめば――と、母は固唾を飲んでその様子を見守るのであった。