 
	チャアはずっと見ていたんです。
	フィジアンのおじさんが椰子の葉っぱで帽子を編むのを。
	
	それで帽子が出来上がったとき、おじさんはチャアに聞きました。
	「この帽子が欲しいかい? 7ドルだよ」って。
	
	チャアはすごく欲しかったんだけど、ママに「買って」って言えませんでした。
	だってお財布は部屋に置いてきちゃったし、
	"ひとり一つ"って決められているおみやげはもう買っちゃったし、
	それにこの帽子、かさばるんですもの。
	きっとダメって言われると思ったんです。
	
	ところがどうしたことか、ママは帽子を買ってくれました。
	チャアは嬉しくて嬉しくて、帽子を大事に日本に持って帰りました。
	
だけど、一週間したら、帽子はすっかり色が変わって、形も崩れてしまいました。
	でもそれでもいいんです。
	チャアはずっと忘れません。
	おじさんがどんなに上手に帽子を作っていたか、
	帽子を買ってもらって、どんなに嬉しかったかを。