Thailand  プーケット島ラグナエリア

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【 買い出し 】

リビングルーム"

散歩に出たきりんとうさぎは、まずとりあえず明日の朝食の段取りをしておくことにした。 明日は観光があり、8時半集合だ。朝食に何を食べようかと迷っているヒマはない。

「エクスキューズミー‥」と、うさぎはまずフロントに声をかけ、 アラマンダ内のレストランの朝食の値段を聞いてみた。すると、朝食ブッフェは一人390バーツという答えだった。
きりんとうさぎはごにょごにょ日本語で相談し、
「390バーツというのは日本円で1500円くらいであるからして、わが家の朝食としては高級すぎる」 という結論を導き出した。

そこで次に食料調達を考え、また「エクスキューズミー」付きで、
「アラマンダには食料を調達できるような店があるか」とフロント係に尋ねた。
「ない」という返事だったので、また日本語で相談し、お隣のシェラトンへ行ってみることにした。 シェラトンには店がたくさんあると何かで読んでいたので、 朝食にするようなものがなにか見つかるやもしれぬと期待したのである。

だが、高級ホテルのシェラトンにも食料品の店などあるわけがなく、うさぎたちはまたアラマンダに引き返した。
アラマンダのフロントでまた
「どこへ行ったら食料が手に入るの?」とまたまた「エクスキューズミー」付きで尋ねる。すると、
「スーパーの送迎を呼ぶから、そこに座って待て」と言われた。

「オー、サンキュー」とは言ってみたものの、 今度は〔その送迎に法外な料金を請求されたらどうしよう〕という不安が頭をもたげ、 またまたまた「エクスキューズミー」付きで
「その送迎はいくら掛かるの?!」と聞いてみた。
すると、そのフロントのタイ人は、に〜っこり笑って言った。

"It's free, タダね〜"

この "タダね〜" という日本語を聞いた途端、うさぎの髪の生え際からどっと汗が噴き出した。
「朝食を手に入れたい。しかし金をかけたくない」という葛藤は、畳み掛けるような質問の内容から、 おのずとフロント係に知れていたに違いあるまい。 たかが朝食一つのことで、人にあれこれ尋ねては、相談を繰り返す日本人の夫婦者‥。 他人の目に映るおのれのケチくさい姿が、"タダね〜"という言葉を聞いた瞬間、うさぎ自身にも見えたのだ。

あー、恥ずかしい。あたしってば何てケチなの‥。

尤も、ろくに日本語を知らないこのフロント係が「タダ」という単語に限って知っていたところをみると、 うさぎのように些末な金銭にこだわる日本人客はあんがい多いのかもしれない。
「これっていくら?  それともタダ?」などと尋ねられるうちに彼が「タダ」という単語を覚えてしまった経緯を想像し、 日本国民を代表して、穴があったら入りたくなってしまったうさぎであった。

しばらくすると、ラグナエリアの外側に隣接しているジャイアントスーパーのおっさんが、 ものすごい車でうさぎたちを迎えにやってきた。その車の何がものすごいって、

うしろ半分が、ない。

車軸に車輪だけは付いているが、うしろ半分がスケルトン状態なのだ。 もともとはバンだったのを、前半分だけ残して‥どうしちゃったんだろう?
「きっと、荷物とかを乗せるのに都合がいいように改造したんだよ」とうさぎは考えてみたが、
「えー、そ〜かあ? 本当に〜?」ときりんは賛成してくれなかった。真実はいまだにナゾである。

ジャイアントスーパーは一階建てで、売り場の面積は広いが、商品はカッサリ、という店であった。 ジュース類ばかりが充実していて、食べ物はインスタントラーメンが主力商品。 それにフルーツのカンズメ、離乳食、お菓子類などが少しあるくらいだった。
結局、うさぎたちはコーンフレーク、パンケーキの素、それにラーメンをどっさり三種類と、 グアバジュース (味は結構いけるが、匂いがきつい) を買って明日の朝食に備えることにした。

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