 
	ビーチでちょっとスナックを食べたものの、大の大人の腹の虫がそんな程度で収まるわけがない。 かと言って、子供たちを水の中に残して二人だけで食べに行くわけにも行かない。
午後も1時を過ぎ、きりんとうさぎがプールサイドのデッキチェアの上で空腹に耐えていると、 プールサイドのレストランのウェイトレスが、"Can I help you?" (御用はありませんか?) と言いながら近づいてきた。 日本では「まずくて高い、量も少ない」のがプールサイドの食事の通り相場なので、 普段ならすげなく断るところだが、すっかりお腹がペコペコだったうさぎは、メニューを持ってきてもらうことにした。
	メニューにはサンドイッチやハンバーガー等パン系の軽食と、カクテルやジュースなどが載っていた。
	きりんはロブスターサンド、イタ飯好きのうさぎはフォッカチオとストロベリーミルクシェイクを注文した。
	3点でいくらになるかを頭の中で素早く計算したきりんが
	
「たかが軽食に2000円もかかるなんて‥。ああ、やだやだ」
とブツブツ文句を言った。
	ところが。
	運ばれてきたものを見て、びっくり!!
	それはなんと、ロブスターの分厚い身がこぼれ落ちんばかりにのったホットドッグと、
	ものすごく分厚いパンの上にトマト、その上にハンペンのように白くてボリュームのあるチーズ (?) がのっかった、
	超ゴーカな軽食だったのだ。それぞれの皿には簡単なサラダとポテトまで添えられている。
	量的にも充分なら、味も文句のつけようがない。
	ついさっきまで「高い」とブツくさ言っていたきりんが
	
	「こんなすごいロブスターが普通の値段で食べられるなんて、
	タイってやっぱり物価が安いんだな」
	
と、すっかり上機嫌になって言った。
	「お昼だよー!」と、うさぎは水の中にいるネネとチャアに声をかけた。
	「見て見て! すごいでしょ?! おいしそうでしょ??」とウキウキしながら。
	だが、二人とも気のない返事。プールの方を始終見やりながら、ろくに食べもせず、
	そそくさとプールの中に戻ってしまった。
	あんなに泳いでいたのだから、おなかがペコペコのはずなのに。
	子供たちにとっては、この素晴らしいランチも、プールの魅力には勝てないのであった。