ドレープカーテン

ダイニングの窓辺

20年前、所帯を構える際にカーテンを買いに行ったとき、 「一枚で通年使えるドレープカーテンが欲しい」と告げたら、 どこの店でも困ったような顔をされたものです。 けれど昨年、引越しを機会にカーテン屋で同じセリフを告げたら笑われました。 「いまどきカーテンの衣替えをする家なんてほとんどありませんよ」と。 時代は変わったものです。

20軒ほどカーテン屋をハシゴしましたが、 最後まで決まらなかったのが、食堂のカーテン。 最初に「これだ!」と思ったのは、 金糸入りの華やかなもので、 朗らかな色調がいたく気に入り、 このカーテンをバックに午後のお茶を飲んだらどんなに優雅かしら、と夢が膨らみました。 けれども「待てよ。このカーテンの前で納豆をこねる気になるかしら?」とふと思い、 後ろ髪を引かれつつ、諦めました。

次に目にとまったのは、麻混の素朴な風合いのもの。 向こうが透けるほど薄い生地、その涼しげな風情が気に入りました。 でも「待てよ、今は真夏だからこういうのに惹かれるけれど、冬はどうかしら?」とふと思い、 決断を秋に持ち越しました。 そして案の定、秋に再び見てみると、その生地は少し頼りないように思えました。

結局わたしが選んだのは、淡いコーヒー色の無地のカーテンです。 生地は厚すぎず薄すぎず季節を選ばず、 抑えた色味はどんな食卓にも合います。 平凡な分、飽きもきません。 思わず頬ずりしたくなるような柔らかな手触りが、とても気に入っています。

初稿:2007年7月12日

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