Fiji  マナ島とフィジアン

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【 フィジーの人々T 】

ビーチ

マナでビーチタオルを借りるのは、ちょっと面倒だ。 島の中央付近にある「リネン・ブレ」まで取りにいかなくてはならないから。

「リネン・ブレ」は、主に部屋に置いてあるリネン類を収納・集配するための小屋だ。 したがって本来、ゲストには縁のない裏方の場所なのだが、 ゲストとスタッフの動線の分離がかように不完全なあたりが、素朴なマナらしいといえばマナらしいかもしれない。

今日も昼過ぎにビーチタオルを借りに行くと、ビーチタオルは出払ってしまって、一枚もないとのことだった。
「もうすぐナンディから来るボートがタオルを積んでくる。それまでその椅子に掛けて待っていろ」と言うので、 しばらく椅子に腰掛けていた。すると、フィジアンにしては小柄な男性のスタッフが
「コーリア? ジャパン?」とうさぎに尋ねた。うさぎは「日本人よ」と答え、
「ここに集めたタオルやシーツはナンディで洗って、またボートで運んでくるの?」と尋ねると、
「そうだよ。でも、この仕事は良くないね。何しろボスが日本人だからよー」 と険しい表情を変えずに彼は言った。
‥うーむ、これって冗談なんだろうか?? さっきうさぎは日本人だと答えたよねえ?? 彼の意図を測りかね、うさぎは日本人お得意の曖昧な笑みを浮かべてごまかした。

スタッフがニコリともせず、ゲストであるうさぎの方が愛想笑いを浮かべる。 マナではこういう場面を都度つど経験した。
日本人のうさぎは、愛想笑いがクセになっている。 笑いたくなくても、笑う必要などなくても、人と目が会えば、反射的に顔に笑みを浮かべてしまう。
ところが、ここの人たちは、笑いたくなければ笑わない。また、笑う必要も感じないらしい。 挨拶をするときくらい、にっこり笑っても良かろうと思うのだが。
ゲストが行き交うレストランやレセプション関係のスタッフは笑顔も仕事のうち、とわきまえているのか、 にこやかだが、ゲストに触れるチャンスの少ない職種のスタッフにはそんな配慮があらばこそ。 ことほど左様の無愛想ぶり。 わざわざ話し掛けてくるところをみると、決してこっちに無関心なわけでも、 まして敵意をもっているわけでもないと思うのだが、相手が笑顔でないとなんだか不安になってしまう。 つい、嫌われているのではないか、とまで考えてしまううさぎであった。

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