Fiji  マナ島とフィジアン

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【 魚とり 】

魚

昨日、きりんは海で小さな魚を一匹捕まえた。手でピシャッと叩き、砂の上に落として捕まえたのだ。 さすがは金魚すくいの名人である。

捕まえた魚は、浜辺に打ち捨てられたタイヤを水槽に見立てて、その中に入れておいた。 魚を捕まえることができるのだと知った子供たちは、魚捕りに夢中になった。 けれど、いくらやってもきりんのように魚を捕まえることができず、魚捕りはきりんの仕事となった。

今日はうさぎの提案で、ブレの前にあるタライを持ってきた。 ブレの玄関脇には一つづつ、水を張って花を一輪浮かべたタライが置いてある。 これは本当は足の砂を落とすためのものなんだそうだ。

午前中はまだ満ち潮で、昨日のタイヤが水没してしまっていたため、 二つ持ってきたタライのうち一つは捕まえた魚を入れるのに必要。残った一つを捕獲用に使うことにした。
そんなわけで、今日のきりんは海の中に座り込んでタライを水に沈め、 朝食ビュッフェでもらってきたコーンフレークをエサに、魚がかかるのをじっと待つ体制に入った。 Tシャツを肩に巻き付け、両手でタライを構えるその姿は、まるで漁師。 どうしてこんなことにそこまで真剣になれるのか、うさぎには理解ができないが、その姿を見ているだけで可笑しい。 そして、この方法でも昼までに3匹、そのあとまた2匹ほど捕まえたのだから、大したものだ。

捕まえた魚は大きさこそ違うものの、昨日捕まえた魚と同種のようだった。 体長は5ミリ〜10センチで、スリムな体型。流線型の体をくねらせ、広い海の中をすばしっこく泳ぎ回る。 透き通っているので、海の中では水の動きに紛れてしまうが、 白い砂底の上にできるグレイの影でその存在が確かめられる。 時折、瞬間的に脇腹を上に向けることがあり、その時だけ打って変わったように銀色に光るのが不思議だ。

タライの中に捕らえられた魚たちは、どこかに出口がないかと慌てふためいた様子で探していたが、 しばらくすると、観念したかのように動かなくなった。 子供たちが海草を拾ってきていれると、ただのタライもちょっと素敵な箱庭になった。 だが、魚たちにとっては地獄のような箱庭だ。なぜって、子供達が手で触りたがるから。
「ぎゅっと掴むと、死んでしまうよ」と一応注意はしたが、分かってんだかどうか‥。 魚がかわいそうで見ちゃいられない。 それに、熱い砂の上にタライを置いておいたのでは、水温がどんどん上がってしまいそう。 時々は水を代えるように子供たちに言い、しばらく海を離れる時には、木陰にタライを置くことにした。

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