 
	リゾート内には「ショッピングアーケード」と称して10軒ほどの店がある。夜遅くまで営業しているので便利だ。
	昨夜「ネッズ」という店に入ると、インド人の若い店番の女性が笑顔で迎えてくれた。
	「日本から来たの?  フィジアンには今日着いたの?」と親しげに話しかけてくるので、
	「ええ。今朝まではマナにいたのよ」と言うと、彼女は目をキラッとさせて身をのりだし、
	「あら、マナに?!  ねえ、マナにはマークって人がいたでしょう?  すごく背が高い人」と言った。
	フィジアン・ブレでの光景を思い浮かべ、
	「あっ、分かった。腕に刺青をしてる人でしょ! カバを粉にしていた彼じゃないかな?」と言うと、
	彼女は我が意を得たり、とばかりに頷いた。
	
	今日もこの店に行くと、昨夜の売り子さんが、
	「あらー、あなたね〜」と言いながらニコニコと近寄ってきた。
	「今日はどうだった?  何をして過ごしたの?」と彼女が尋ねるので、
	「ジョッシュと一緒に自転車でフィジアンの村へ行ってきたわ」と言うと、
	「ああ、ジョッシュね。知ってる。バイクハイヤー (貸し自転車屋) にいる小柄な彼でしょ」と彼女。
	
二日続けてこんなところで「共通の知り合い探し」をやってしまった。 世間は狭いなあ――って、ほんとにフィジーは狭い国だけど。
	ところで、カバを飲んでみたかと彼女が聞くので、マナで飲んだと答えると、
	「美味しい?」と彼女。
	「いや、美味しくはないけど‥、でも健康にはいいみたい」と言うと、
	「そうね。カバはフィジーの薬だもの」
	
へー、知らなかった。カバって本当に薬用効果があるのね。 ここ数日、いつになくお腹の調子がいいのは、マナで飲んだカバのおかげのような気がしてはいたけれど。 カバって味が胃薬みたいなだけじゃなく、本当に胃薬なのかも。
	「あなたはどう? カバって美味しいと思う?」とうさぎが聞き返すと、
	「ええ、もちろん」と彼女。
	体にいいのは分かるけれど、あれを美味しいと感じる人がいるというのはちょっと意外。
	しかも、オヤジならともかく、若い女の子がね。