Fiji  マナ島とフィジアン

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【 モクテルパーティー 】

モクテルパーティー

毎週木曜の2時、リトルチーフクラブでは「モクテルパーティー」が開かれる。 「モクテル」というのは「ノンアルコールカクテル」のことだから、無理に訳すとすれば、 「カクテルパーティーの子供版」ということになる。

このパーティーに出た子供はリトルチーフクラブの正式会員として登録され、記念品を貰えるというので、 木曜日にここに居合わせたことを幸いと思い、子供たちを出席させることにした。 もっとも、英語のまるきりできない子供たちを英語社会の真ん中に置き去りにするのも可哀相なので、 予めどんな内容なのか、クラブの小屋へ聞きにいった。

「今日のパーティーに子供たちを出したいのだけれど、彼女たちは英語ができないので、迷っているんですが」 と切り出すと、
「それなら親も一緒に参加したらどう?」と受付のお姉さんは答えた。親も参加できるのなら、問題はない。 早速、参加の手続きをとることにした。 差し出された用紙に子供の住所、氏名、年齢などを英語で書き入れていると、"D.O.B."という欄があった。
「"D.O.B."って何?」と尋ねると、
「"Day of Birth" (誕生日) のこと」とお姉さん。ああそうかと、チャアの誕生日を書き入れるとお姉さんが言った。 「あら、わたしと誕生日が同じだわ」
「へえ、あなたも9月生まれなんだー」などと話しを合わせていると、お姉さんが神妙な顔で尋ねた。
「あなた、オーストラリアに住んでる日本人?」と。
「いえいえ、日本から直接来たのよ」と答えると、

「ふうん、日本人ていうのは、みんな英語が出来ないものだと思ってたわ」

とお姉さん。その言葉には苦笑した。
いや、お恥ずかしい、ワタクシの英語など「出来る」うちに入りゃしませんが。
‥でも、確かに外人さんとお喋りをすることに対する抵抗感は、普通の日本人よりも少ないかもしれない。 特に最近、英語圏ばかりよく行ってるせいか、今回のフィジーでは英語がわりとよく聞き取れるし、舌もよく回る。 だから、外人さんにも気軽に話しかけられるし、突然話しかけられてもビビったりはしない。

同じ日本人のうさぎから見ても、わが同胞たちは、もともと人と目を合わせるのを嫌う民族である上にもってきて、 外人さんとすれ違う時には常にも増して下を向き、

「頼むから話しかけないでくれ、オレをほっといてくれ〜」

みたいな無言のパルスを強力に発信しているような感じを受ける。 実際に英語ができない、というより、苦手意識が強すぎるだけのような気もするが。

それはそうと、モクテルパーティー。
メインプールで遊びながら、そろそろモクテルパーティーの時間だなと思っていると、スタッフが大声で叫んだ。
「おーい、子供たち! パーティーの時間だよ!! みんなリトルチーフクラブに集まれー!!」そして、 近くにいた子供たちをかき集め、リトルチーフクラブへと連れて行ってしまった。 チャアとネネもその仲間に入れてもらい、きりんとうさぎも後からついていった。

パーティーに集まった人は、ものすごい数だった。 子供だけでなんと70〜80人、それにほぼ同数の親たちが付き添っている。 大きな子は案外少なく、ベビーカーに乗せられた赤ん坊から5〜6歳までが多い。 来月12歳になるネネは見るからに最年長、8歳のチャアでさえ大きい子のグループに入る。
子供たちはみなゴザの上か、その回りに並べた椅子に座り、その回りを更に親たちが取り囲む。 子供たちには紙コップのジュースと紙皿に乗ったポテトチップが配られ、ダンスタイムも始まった。

ダンスが終わると、さっきカバの儀式を取り仕切っていた「長老」が、子供たち一人一人の名前を呼び、 紙袋を手渡し始めた。 紙袋の中には、黄色いリトルチーフクラブのオリジナルTシャツと、正式会員認定書が入っている。 子供たちの中には、Tシャツの代わりに黄色いナップザックを貰っている子がいたが、 彼らはフィジアンリゾートのリピーターなのだった。 正式会員となった子供たちの名前は登録され、フィジアンリゾートにやってくる度に、 違った記念品が貰える仕組みなのだ。

この「会員認定式」が始まると、チャアは
「ママ、チャアの名前が呼ばれたら教えてね、絶対教えてね。 チャア分からないかもしれないから」と盛んに言っていたが、式の後半にいざ名前が呼ばれると、 うさぎがぼ〜っとしている間に自分ですっくと立ち上がり、さっさと歩いて記念品を貰いに行ってしまった。 記念品を受け取った子供たちには、別のスタッフが「ファーイ!!」とハイタッチを呼びかけるのだが、 その呼びかけにもちゃんと応えて、彼の手をパーンと打ち返した。他の子がやることを、ちゃあんと見て覚えたらしい。

それなのに、うさぎはと言えば、ポカンと口を開けてこのチャアの立派な態度を眺めているうちに、 写真の一枚も採り損ねてしまったのだから情けない。 せめてネネの時には写真を撮るぞ、と意気込んではみたものの、ネネは恥ずかしそうに記念品を受取りに行き、 ハイタッチの呼びかけにも「は?」という顔をしたので、一応写真を撮ったものの、 あまりいい出来には仕上がらなかった。

さて、全ての子が記念品を受取り、パーティーが終了すると、子供たちは揃いのTシャツを着て、 船を模した遊具に自然と集まった。 何十人もの子供たちが群がった「リトルチーフ号」は、順風満帆、大海原に漕ぎ出した。 そしてチャアは、網を登ってこの「リトルチーフ号」のマストのてっぺんに座り、 誇らしげな顔で、写真に納まってくれたのだった。

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