 
	ウェスティンに着いたのは、もうお昼近かった。 ロビーからシースルーのエレベーターで地下に降りると、そこがプールエリアの階。 ネネときりんは昨日来たので、勝手知ったるなんとやらだ。
	ウェスティンはレオパレスと資本関係があるらしく、
	足の便が今ひとつのレオパレスのためにいろんな便宜を図ってくれていた。
	ロッカールームの利用権もその一つ。
	レオパレス宿泊者がウェスティンのプールを利用しやすいよう、ロッカールームのキーを貸してくれるのだ。
	男女別のロッカールームの中は、シャワーブースもあれば、ゴージャスな洗面台の上に、
	ウェスティン印のシャンプー等まで置いてあった。
	ロッカーエリアの真ん中には背もたれのない長椅子が置いてあり、着替えに便利。ロッカーもタダで利用できる。
	こじんまりとした空間ではあるが、至れりつくせりだ。
	ウェスティンに部屋がある人はロッカールームで着替える必要などないはずだから、
	この部屋は主にレオパレスからのビジターのためにあるのではないだろうか。なんとも太っ腹なホテルである。
	
ウェスティンのプールエリアは、ビーチに面しており、明るい感じだった。大小二つのプールがある。 それに、ホットジャグジー。さほど広くはないプールサイドには人影もあまりなく、静かだった。
ネネたちは、まず、入口に近い大きなプールの方で遊びはじめた。水は結構深く、冷たい。 場所によって浅いところもあるけれど、チャアにはちょっと深すぎるので、浮輪をしていても、目が離せない。
大きな方にはまばらに人がいたが、奥まったところにある小さなプールの方は閑古鳥が鳴いていた。 でも、うさぎはそういう秘境みたいなところが好きだ。特にうさぎが気に入ったのは、プールの奥にある小さな滝。 緑に囲まれた大きな岩の上から水が落ちてくる。滝の裏は一体どうなっているの? 何があるの? うさぎはネネとチャアを連れ、滝の方まで探検にいくことにした。下痢腹のきりんは専らビデオとカメラ係だ。
	子供たちは背が立たないので、ネネとチャアを両脇に抱えて滝へと向かった。
	そのまま滝の中に突っ込んでいこうとすると、チャアが恐慌を起こした。
	「やだー! コワイ〜、コワイ〜!」それでうさぎは回れ右して滝に背を向け、そっと後じさってみた。
	これが成功! 頭から突っ込むのもお尻から突っ込むのも同じだと思うのだが、これだとチャアも怖がらず、
	うまく滝の裏側に入り込めた。
	
	滝の裏側はうす暗く、洞窟みたいな感じだった。チャアは暗いのも苦手。
	「やだ、やだ! コワイ! 早く帰ろうよ〜!」とまた大騒ぎ。
	「なんで〜? おもしろいじゃん」とネネ。
	「そうよねえ、探検みたいでねえ」とうさぎ。「でも、あれは何? あっちの奥に何かが浮いているよ?」
	
興味を引かれてそ〜っと近づいてみると、それはカニだった。大きなカニの死骸。
「うわあ〜〜〜! カニだぁぁぁ! 死んでるぅ〜!」
ネネが大声で叫び、チャアはうさぎの肩に顔を埋めてしがみつき、うさぎが「きゃ〜〜っ」と悲鳴を上げて、 それで探検はおしまいになった。
プールの前でひとしきり遊んだ後、ビーチへ降りてみた。こじんまりとして静かなビーチ。ちょっと意外。 「グアムのタモンビーチ」という名前のメジャーさから、ハワイのワイキキビーチのような、 広くて人がたくさんいる賑やかなビーチを想像していたけれど、ここは左右を大きな岩に挟まれて、まるで隠れ家のよう。 物売りもいなければ、ゲストも数えるほど。 奥行きのない砂地の上にデッチチェアがいくつか並び、足漕ぎ三輪車が波打ち際に乗り捨てられている。 ひっそりとしていて、なんだか離島にきたみたい。こういうのを「プライベートビーチ」って言うのかな。
足を切りそうな石の階段に用心しながらビーチへと降り立つと、きめの細かい白砂がふかふかして気持ちよかった。 そここちらに真っ白な珊瑚のかけらが落ちている。不思議と貝がらは落ちていない。
ビーチで遊んだ後は、ホットジャグジーに浸かった。ジャグジーはビーチとプールの境にあるから、当然の動線。 きっとビーチから帰ってくると、誰しもジャグジーで砂と塩を落とすのだ。だってほら、底が砂だらけ。