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	うさぎの脇では、キッズクラブで出会った金髪の男の子がやはりこの作業をしげしげと見物している。
	小屋を作っているスタッフに「これは何なの?」と尋ねると、ロイ・クラトーン祭用のものだと言う。
	
ロイ・クラトーン祭は有名なタイのお祭りで、日本の灯籠流しのようなものだと聞いている。 観光局でもらった冊子には
	11月の満月の夜。
	タイ人たちは言い伝えられている水の精を崇め、旧年中の罪を洗い浄めるために
	カトンという蓮の形をしたバナナの葉で作った灯籠に
	焚いた香、花、小銭をのせて水路に流します。
	
	とある。
	11月のちょうどこの時期 (12日〜14日) にタイの各地で行われるというので、
	それが見られれば、とかなり期待していた。
	ところが。この界隈でロイ・クラトーン祭をやるのは14日の金曜の夜だという。
	がーん、うさぎたちは金曜の朝にプーケットを発つのだ‥。
	
たった一日の差でこんなビッグイベントを逃してしまうなんて、不幸〜!!
	水曜・木曜はどのホテルでもロイ・クラトーン祭の準備に余念がなかった。
	バンヤンツリーのロビーでは早くも十字型の池の中央にあずまやが作られ、
	色とりどりの花がバナナの葉の上に置かれていた。
	デュシットには参加者を募る立て看板が置かれ、その脇で民族衣装を着たお姉さんたちが見慣れぬ楽器を奏でていた。
	
	アラマンダの部屋には、満月の下、人々が線香を立てた蓮の花を水路に流している絵が飾られており、
	この絵を眺めるだに、うさぎはこの祭りを見ずに日本に帰ることが残念でならなかった。
	火を灯した花々が、黒光りするラグーンをたゆたうロマンチックな光景を想像し、ため息が出た。
	祭りの準備を見られただけでもめっけものだと思おうとしたが、なかなか諦めきれないのであった。