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	だが実際は、細い水路が植え込みの周りにくねくねとはしっており、案外泳ぎ甲斐がある。
	ときおり激しいシャワーが頭上から降り注ぐところもあれば、
	浅い部分が座るタイプ・寝るタイプのジャグジーになることもあり、
	植え込みの周りの曲がりくねった水路が強い流れになることもある。
	これらの仕掛けは動いたり止まったりを繰り返すのだが、それがかなり気まぐれである。
	何分置き、というような法則性がない。
	時間制の自動制御ではなく、人間がその都度切り換えているような感じだ。
	その仕掛けで遊んでいる人がいるときにはずっとオンになったままのような気がしないでもない。
	
	ネネとチャアはうねうね水路の激しい流れがすっかり気に入り、ビート板や浮輪につかまって、
	何度も何度もぐるぐる回った。
	この流れの激しさ加減たるや、日本の「流れるプール」の比ではない。
	プールサイドにつかまっていようが何しようが、むりやり押し流されるような「激流」である。
	プールの縁に体が触れでもしたら、擦りキズができそうだ。
	
プールサイドのデッキチェアには様々な色のビーチタオルが掛けられていた。 中でも目立つのが黄色いビーチタオル。 我々が9時にここに来たときはもう既に黄色いタオルが二枚ほど掛けられていた。
ラグナエリアでは、このビーチタオルの色で、どの客がどのホテルに宿泊しているのかが分かる。
	アラマンダの花のついた黄色いのはアラマンダのタオル。
	シェラトンのタオルは月桂樹マークのクリームと白のストライプか、カモメ印の紺。
	バンヤンツリーのタオルは緑色。
	デュシットはエンジとピンクのツートンで、すいれんの花のマーク入り。
	ラグナビーチクラブは青、またはP.I.C.のヨットマーク入りの水色だ。
	
	バンヤンツリーのプールサイドには、スタッフが何人もうろうろしていて、新しい客がくると、
	タオルの色に係わらず、白いカバーのかかったマットレスをはたいたり裏返しにしたりしてきれいにし、
	その上に客のビーチタオルを丁寧に広げてやる。
	各ホテルによってスタッフの接客態度が異なっているのがおもしろい。
	シェラトンのスタッフはいたってカジュアル・フレンドリーだし、アラマンダは暖かい感じがする。
	けれど、バンヤンツリーのスタッフは、まさに「使用人」である。
	白く丈の長い服を着て、うやうやしい態度で客に仕えている。
	
プールに浸かりながらバンヤンツリーを見渡す。その景色の面白さは、「覗き見」の面白さであった。 プールの向こうに植え込み、その後ろにちらっとまた青いプールが見え、更にその奥に植え込み、 更にそのずっと奥にはコテージの赤褐色の屋根 ――といった具合に、様々なものが幾重にも重なって奥行きを感じさせるのだ。
昼過ぎにプールサイドで昼食を取った。 春巻き 、フライドチキン、クラブサンド、スイカジュース、レモンジュースを注文した。 やっぱりここでもプールサイドの食事は正解。 ジュースは生の果物から絞りたて、春巻きの付け合わせのプラムソースも甘くておいしかった。