モンゴル語

モンゴル語で喋ってみた

 ハイシーズンたけなわのモンゴルへ行き、首都ウランバートルからほど近いテレルジ国立公園のゲルキャンプで約1週間過ごしてきました。

「ゲル」ってこういうの。

 ゲル(гэр)というのはモンゴル語で「家」という意味。でも日本語で「ゲル」と言えば、モンゴルの遊牧民が住む伝統的な移動式住居を指します。ゲル宿泊はモンゴル観光の目玉で、風光明媚なテレルジにはツーリスト向けのゲルキャンプがたくさんあります。

わたしが宿泊したツーリスト用ゲルキャンプ。

 わたしが滞在したゲルキャンプは家族経営で、アラフォーの女性が中心となって運営されていました。で、英語が話せるのはその女性だけ。そんな、モンゴル語学習者にとって願ってもない環境の中で、わたしはどのくらい、どんなことをモンゴル語で喋ったのか。写真と共に振り返ってみたいと思います。 

モンゴル語で喋ったこと

Баярлалаа(ありがとう)

 これはやはり一番使いました。

 でも正直、通じている気がしませんでした。スペル通りに発音するとすると、バイルララー、みたいな感じになるのですが、モンゴル語って発音が難しい。ほんと、悲しいくらい通じませんでした。モンゴル語でお礼を言ってることすら分かってもらえてなかったかも?😿

 それで唯一英語のできる女性に頼み、なんどか発音してもらいました。すると、バイツラーもしくはバイスラー、みたいな発音でした。これで練習しましたが、最後まで通じている確信はありませんでした。

 ちょっと丁寧に言いたいときは、テキストに出てきた通り

  • Танд их баярлалаа.(どうもありがとうございます)

と言いました。こっちのほうがよく通じた気がします。

Дажгүй(心配ない・大丈夫)

 入門書「ゼロから話せるモンゴル語」に出てきた表現。これ、めっちゃ使いました。実はわたし、滞在の序盤に足首を捻挫してしまったのです。スタッフは全員それを知っているものだから、わたしの顔を見るたびに Дажгүй юү?(ダッジグイユ?)と聞いてくれました。その度に Дажгүй, дажгүй!(ダッジグイ、ダッジグイ)と元気よく歩いて見せました。

 捻挫したことで、毎日乗ろうと思っていた馬には一度しか乗れなかったし、行きたいところにも行けず、損をしたことはたくさんありますが、その分キャンプに長くいてスタッフの方々と触れ合えたので、むしろ得したのかなー?なんて思うこともあったりなんかして^^

 怖いもの見たさなのか、みんな患部を見たがる。むくみと内出血ですごいことになっている足を見せると「おおー!」という感じで、何気に満足げ?でした。単調な日々に刺激を提供できて良かった(笑)。

 ちなみに怪我をしたのはアリヤバル瞑想寺院というチベット仏教のお寺にハイキングに行ったときです。寺院の入口までは車で送ってもらったのですが、本堂は山の中腹に建っていて、車を降りてから本堂までかなり山を登るのです。しかも最後は108段(煩悩と同じ数)の階段を登らなくてはなりません。

 その日はあいにくの雨。坂道が雨で滑りやすくなっていました。それでも行きは何事もなかったのですが、帰りは近道を行くことにしました。岩がゴロゴロの。そしたら雨で滑って転び、見事に足首を捻挫( ̄▽ ̄;) よく考えたら、高低差は同じなのに道のりが短いってことは、それだけ坂が急ってことよね。子どもが歩いていたからついて行ったんだけど、無謀でした(;^_^A

 ほうほうのていで車に戻るとドライバーさんがびっくりして尋ねました。

  • Эмнэлэг явах уу?(病院に行きましょうか?)

 このモンゴル語がすんなり分かったのは、入門書を読み込んでおいたおかげです。怪我をする予定はなかったので「病院(эмнэлэг)なんて単語、使わないよ」と思いながら読んだのですが、まんまと使う羽目に( ̄▽ ̄;) 

 折角なのでスキットに出てきたそのまんま

  • Эмнэлэг ойрхон уу?(病院は近いですか?)

と尋ね返すとなんか知らない単語が返ってきたので、これはきっと遠いということだな、と思い(「遠い」という単語は知らなかった)

  • Тэгвэл явахгуй.(それなら行きません)
  • Дажгүй.(大丈夫)

と答えました。これが最初に Дажгүй を使った瞬間でした。

 あとで英語のできるスタッフに尋ねたところでは、最寄りの病院は20~30キロ先だということでした。どうやら遠いという推測は間違ってはいなかったようです。

 ちなみにその日のエクスカーションはまだ続きがあり、予定を切り上げて宿に帰りますか?と尋ねられましたが、予定通り写真スポットで写真を撮り、しっかりお土産屋さんにも寄ってもらいましたとさ^^

Чиний нэр хэн бэ?(君の名前は?)
Чи хэдэн настай вэ?(君、何歳?)

 これも「ゼロから話せるモンゴル語」に出てきた表現そのまま。これらもよく使いました。滞在したゲルキャンプに小学生くらいの子どもが5人、キャンプのお隣はリアル遊牧民で(定住しているらしいけど、馬や牛を飼って生活)、そのお宅にも子どもが少なくとも6,7人いて、新しい子どもに会う度に名前と年齢を尋ねました。

 自分より年上の人に尋ねるときは Чи(君)ではなく、Та(あなた)を使います。でも自分より年上かどうかって分からなくないですか? ゲルキャンプのドライバーさんに尋ねたときは、年上かどうか分かりませんでしたが、とりあえずТа(あなた)を使って尋ねました。

  • Таны нэр хэн бэ?(お名前を頂戴できますか?)
  • Та хэдэн настай вэ?(おいくつですか?)

 すると 63 настай と返ってきました。おお、年上だ! しかもわたしと一歳違い!

  • Би 62 настай.(わたしは62歳です)
  • Тэр 64 настай.((夫を指さして)彼は64歳です)

と言うと、ドライバーさんも「ほとんどタメじゃん!」みたいな感じ(たぶん?)で盛り上がっていました。

 それはまだウランバートルからテレルジのゲルキャンプへと向かう車中で、「おお! わたしモンゴル語で会話できてる?!」と喜びMAX。100までの数字を言えるようにしておいて良かった!

 車がゲルキャンプに着くと、英語ができるはずのスタッフがなんとモンゴル語で出迎えてくれました。「こんばんは。モンゴル語が話せるそうですね」と。え、なんでそう思うの?と思いましたが、そういえばドライバーさんが運転しながら電話をかけていましたっけ。あの電話で「この人、モンゴル語が話せるよ」と伝えたのでしょう。

 荷物をゲルに運びながら

  • Та монгол хэл хэдэн жил узсэн бэ?(モンゴル語は何年やったのですか?)

と訊かれました。もう嬉しくなっちゃいました。だってこれ、テキストに出てきたそのまんまなんですもん! 思わず笑いながら

  • Хоёр сар.(二か月です)

と答えると絶句してました。そしてそこから突然英語になったところを見ると「なんだ、そんなに喋れるわけじゃないのね」と判断されたのだと思います(笑)。

その他

 頻繁に使ったフレーズは上の3つだけ。その他のフレーズはここに纏めて書きます。

Сайн байна уу?(こんにちは)

 これはまあ使いますよね。成田でMIATモンゴル航空に搭乗したときから始まって。モンゴル語で「こんにちは」は疑問形。「元気ですか?」みたいな感じです。でも向こうの人、あんまり使わないっぽい?

Цай байна уу?(お茶はありますか?)
Цай авна.(お茶を頂きます)

 飛行機の機内で飲み物の注文を聞かれて。お茶なんてあるに決まってるけど、モンゴル語で言ってみたくて使ってみました。ほんとはジュースが飲みたかったけど、モンゴル語でジュースってなんていうか知らなかったからお茶でガマン(笑)。ус(水)は知ってたので、お水はもらえました。

Үүнийг танд барья.(これをあなたに差し上げます)
Энэ Япон бэлэг.(これは日本土産です)

 最初の文は、これも「ゼロから話せるモンゴル語」に出てきた表現そのまま。ゲルキャンプのスタッフ(子ども)とお隣の遊牧民の子どもに日本のお菓子をあげるときに使いました。相手が子供だから танд じゃなく чамд に替えたほうがよかったかな。

 お礼を言われたときの返答は、

  • Зүгээр, зүгээр.(いえいえ、どういたしまして)

Уучлаарай, 〇〇 байна уу?(すいません、〇〇さんはいますか?)

 英語の通じるスタッフが一人しかいないので、込み入った話をするときはその人を呼んでもらいました。もしこれがモンゴル語で言えなかったらけっこう困ったんじゃないかな。

Уучлаарай, сүүтэй цай байхгүй юу?(すいません、スーテーツァイはないですか?)

 食堂で注文したのだけれど、スーテーツァイ(モンゴルのミルクティー)だけ配膳されなかったので厨房に聞きに行きました。忘れていたらしく、「Уучлаарай(ごめんなさい)」と言って慌てて持ってきてくれました。

モンゴルのミルクティーсүүтэй цай
ほのかに塩味で、ミルクの割合が高い。

Сайхан амарсан уу?(よく休みましたか?)
Сайхан амраарай.(お休みなさい)

 これは朝の挨拶と夜の挨拶。どちらも同じ動詞を使うのでお得感が。

Их амттай!(すごくおいしい!)
Би энэ дуртай.(わたしはこれが好きです)

 この амттай(美味しい)と дуртай(好き)も意外と発音が難しい。амттай(美味しい)スペルからすると「アムッタイ」なんだけど、実際に発音してもらうと「アムツタイ」に近い。「アムッタイ」と「アムツタイ」ではリズムが違い、リズムが違うと言葉って通じないんですね。

Өнөөдөр морь унаж үзмээр байна.(今日、馬に乗ってみたいです)

 捻挫により、乗馬の予約をキャンセルせざるを得なくなりましたが、ゲルキャンプの脇を馬に乗った観光客の一軍がしょっちゅう通るのが羨ましくて、帰国直前、意を決して乗りました。乗っている間は足を使わないからノープロブレムですが、乗り降りが大変。鐙から足が外れなくて無理やり外したら痛め直したけど、後悔してません~。

 他にまた使ったモンゴル語を思い出したらここに追加していきます。

最後に

 とんだアクシデントに見舞われましたが、楽しいモンゴル旅行でした。

 それもこれも二か月間、モンゴル語をやっていったおかげ。Duolingoにはモンゴル語コースがなく、DMM英会話にはモンゴル語ネイティブがいないという寄る辺なき状態だったため迷走しましたが(過去記事参照)、最終的にはなんとかなりました。

 今回は白水社の「モンゴル語のしくみ」と三修社の「ゼロから話せるモンゴル語」に大変お世話になりました。この二冊は著者が同じで、この順番に読むと大変分かりやすかったです。わたしがモンゴルで喋ったフレーズのほとんどは「ゼロから話せるモンゴル語」のスキットに出てきた言い回しそのまま。現地で使える言い回しが満載でした。

 モンゴル語のように話者が少ない言語って、学習者も少ないだけに、少しでも話せる、もしくは「話そうとする」だけで地元の人に評価されます。

 ウランバートルの空港で荷物が出てくるのを待っていたときのこと。ベンチで自作のモンゴル語ノートを見ていたら、となりに座った若いモンゴル人女性が日本語で話しかけてきてくれて「日本人が書いたモンゴル語って初めて見ました」と喜んでくれました。LINEを交換したいとまで言ってくれて、ただそれだけで「モンゴル語やってよかったなあ」と思いました。ただどういうわけか(海外だから??)、友達申請がどうやってもうまくいかず、繋がれなかったのですが。


 モンゴル旅行というと、通常ツアーか、英語か日本語のできるガイドを雇うのがデフォです。元共産圏で英語が通じにくく、文字もキリル文字だから、通訳ガイドなしだと不安なのでしょう。

 でもわたしは通訳ガイドをつけず、それでも全く不安はありませんでした。キリル文字が読め、モンゴル語が全く未知の言語ではなかったからだと思います。

 全く訳の分からない未知の言語を話す人々に囲まれていると、一体何を考えてるのか分からなくて不安かも知れませんが、ちょっとでもその地の言語を学んでいくと、それだけで親しみが湧きます。

 実利的には、モンゴル語なんて一ミリもできなくたって困らない。今は翻訳アプリが優秀ですから。でも得体の知れない不安を取り除くという意味では、ほんのちょっとの語学が役立つ。

 モンゴル旅行って近い割に値段が高いイメージがありますが、それは通訳ガイドを雇う前提だから。それを除けばお安く行かれますので、みなさんも検討してみてはいかがでしょうか。

 夏のテレルジは百花繚乱。この世の楽園みたいに美しいところでしたよ!

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