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英検準1級体験記(一次試験編)

 2007年6月、英検準1級を受検しました。 得点は99点満点中81点(語彙20/25、読解26/26、作文8/14、リスニング28/35)でした。

 この体験記は、怠け者でとかく挫折しがちなわたしが、まがりなりにもひと月間、奮闘努力し、 英検準一級の合格を勝ち取った記録です。 これから英検準一級受検を考えていらっしゃる方のなにがしかの参考(反面教師を含め)になれば幸いです。

問題集の積読――のらりくらりの4年間

 英検準1級受検を考え始めたのはもうかれこれ4年ほど前のこと。 子どもの英検受検に付き合って準2級、2級を取得したあと、次は準1級と思ったのは、まあ当然の流れでした。

 ところが9割以上の得点率で準2級・2級を軽く下し(?)、さあ次は準1級だと思って 問題集を買ってみたら、なんと見事なまでに、全然出来ない(涙)。 それは語彙問題集だったのですが、 見る問題見る問題、 4つの選択肢のうち、一つも知っている単語がないという事態に遭遇し、すっかり意気消沈してしまいました。

 「これはひょっとして、問題集が難しすぎるのでは?!」 そう思ったわたしは、少し簡単そうに見える 2冊目の問題集を購入、1冊目をうっちゃっておき、 2冊目をやおらやり始めました。

 ・・・ところがねえ、これも簡単に思えたのは最初のほんの数ページ、その後は急速に難しくなり、あっけなく挫折。 それもそのはず、準1級用の問題集という意味では前のと同じなんですから、そう難易度に差があるはずもありません。

 「そうか、もしかして最初から問題を解こうとするから挫折するんだ。 単語を覚えるテキスト形式のものを使ったらどうだろう?」 そう思ったわたしは3冊目を購入。 しかし、似たようなスペルの単語の羅列にウンザリしてこれも挫折。 ・・・愚かですねえ・・・。

 さすがに4冊目を買うのは思いとどまりましたが、 最初の数ページしか手のついていない英検準1級の対策本が3冊も本棚に飾ってあるのを見るにつけ、 自分のダメさ加減を確認させられるようで、イヤ~な気分に。 せっかく買った本だけど、見るたびに癪に障るので、もう捨てちゃおうかな、と何度も思いました。

 英検の季節が巡ってくるたびに「ママ準1級受けないの?」と娘たちからは言われる。そのたびにチラっと対策本をめくり、「今度こそ、英単語が分かる自分になっているかも?!」という奇跡を夢見たりもするのですが、 現実はそう甘くない。普段全く英語に触れていない身に、以前知らなかった単語が分かるようになっているはずもなく、「ああ、やっぱりダメかあ」と思いつつ、毎度パタンと本を閉じるしかないのでした(悲)。

待てば海路の日和あり?

 そんなわたしにも、ある日チャンスが巡ってきました。娘がたまたま塾で英語構文集のCDをもらってきたのです。

 このCDには本当はテキストがあって、そちらは有料。しかも何万もする塾の講座に申し込まないと、手に入れられないのでした。

 その有料テキストを、わたしはなんとかタダで手に入れられないかと思いました。つまり、そのCDに吹き込まれている構文を全て聞き取って紙に書き取ればいいわけ。わたしってヤツは、こういうケチくさい動機には燃えるんですよねー。お金を出さないと手に入らないものをタダで手に入れるというシチュエーションほど 意欲を掻き立てられるものはない。春休みからゴールデンウィークにかけて、ヒマを見つけては娘をせっつき、2人して構文を聞き取り、答え合わせをしながら、500の構文を書き取っていきました。全部で30~40時間ほどかかったでしょうか。やけに張り切っている母を見て娘曰く、「ママって実は英語が好きだったんだね」。 ・・・ハハハ・・・。

 娘とわたしの英知(英語の知識だけに「英知」^^;)を総動員し、更に夫まで巻き込んでもどうしても 聞き取った音が文法的にうまく収まらない箇所が3つほどあり、これは後日、塾で有料テキストを見せてもらい、解決しました。 ありがとう! 塾!

 500構文の書き取りを完了した直後には、英検の申し込み締め切りがありました。いつものように「準1級、今度こそ受けようかなあ?」と悩んでいると、娘曰く「受けなよ! 英語にハマっている今がチャンス!」 ・・・いや、別に英語にハマっていたわけじゃないんですがね・・・。

 でも500の構文を書き取ったことで、多少は耳の訓練になったはずだし、今まで知らなかった単語をいくつか覚えたのは確かです。ひょっとしたら勝機があるやも?と思い、過去問をやってみることにしました。「これが6割とれたら受ける。取れなかったら受けない」と決めて。

 結果は約7割でした。苦手な語彙問題が約5割、リスニング・読解がそれぞれ約8割。英作文は採点できないので除外しました。

 「なんだ、意外とできるじゃん! これならいけるかも?!」と、ここで大喜びしたわたしは馬鹿でした。実は準1級のボーダーラインも、2級までと同じく6割程度だと思いこんでいたのです。まさか7割を超えることもあるとはつゆ知らず・・・。

2011年2010年2009年2008年
3回2回1回3回2回1回3回2回1回3回2回1回
71%69%70%67%68%70%68%68%66%68%70%67%
71点69点70点67点68点70点68点68点66点68点70点67点
2007年2006年2005年2004年
3回2回1回3回2回1回3回2回1回3回2回1回
71%70%71%72%72%69%69%69%67%66%67%66%
71点70点71点72点72点69点69点69点67点66点67点66点
2003年2002年2001年2000年
3回2回1回3回2回1回3回2回1回2回1回
67%70%61%65%73%70%69%66%71%63%61%
54点56点49点52点58点56点55点53点57点51点49点

合格の決め手は時間配分にあり

 まあ、結局受かったのだから、受けて正解だったのかな? また、過去問をやったのは正解だったと思います。敵を知り己を知れば百戦危うからず。タダでできることはとりあえずやってみるに限ります。ありがたいことに、英検はタダで過去3回分の過去問を公開していますからね。

 過去問をやってみて分かったのは、語彙問題を捨てても勝機はあるということでした。

 英検合格のカギは語彙問題が握っていると、よく対策本には書いてありますが、 そうとばかりはいえない。語彙問題は99点満点中25点。全体の4分の一です。しかも4択。一問も分からず、エンピツ転がして選んだって2割5分、つまり6問くらいは当たる。てことは、他で8割以上取れれば6割5分、9割取れれば7割以上とれるわけです。

 語彙問題の制覇にはいままでさんざ挫折していますから、 ここはヘタに語彙問題に手を出すより、まずは他で確実に得点できるよう、脇を固めようと思いました。

 ただ、それには英文を読むスピードがカギだと思いました。2級までは時間に割と余裕がありますが、どうやら準1級はそうではないらしい。実は、過去問で正解できなかった読解の2割というのは、時間切れで解答できなかった分です。語彙問題やら作文に時間をかけていたら、時間切れとなってしまったのです。読解問題を最後までやりきるためには、予め時間配分を決め、いくつかある長文も、自分で決めた時間配分内で正確に読み取る訓練をしたほうが良いと思いました。

邪道な?リスニング対策

 リスニングはどう頑張ってもそう短期間に効果が見えるものではありませんから、対策といえるかどうか分かりませんが、筆記試験中にリスニング選択肢に目を通しておく という作戦でいくことにしました。

 リスニングで答えを選ぶのに与えられる時間は一問につきたった10秒。精神的に焦っている中、たった10秒で4つの選択肢全てに目を通すのはかなり厳しいものがあります。予め選択肢を読んでおけば、そこがずいぶんとラクになるし、選択肢から、質問の内容がおぼろげに想像できるものもあり、聞き取り自体もラクになりますが、聞き取り試験の前に与えられる選択肢に目を通す時間はわずか2分程度。これで全ての選択肢に目を通すのは常人には無理な話です。リスニングで安定した点数をとるには 筆記の時間を少々削っても、リスニングの予習に振り向けるほうが得策と判断しました。

 結局、わたしが決めた筆記の時間配分(全部で90分)は以下の通りです。

  1. 語彙問題―――――20分
  2. 長文補充―――――15分
  3. 長文読解―――――30分
  4. 英作文――――――15分
  5. リスニング予習――10分

 こう決めたものの、わたしにとってこの時間配分を守るのは難しいものがありました。筆記はなんとかやりおおせても、リスニングの予習時間まではなかなか捻出できない。けれども、二回目にやった過去問では長文補充と読解が満点であったにもかかわらず、予習せずに臨んだリスニングが約6割で、全体(英作文を除く)としては一回目よりも点数が下がってしまったため、リスニングの大切さを痛感。 ここはやはりスピードが勝負だと再認識しました。

長文読解のスピードアップ

 長文を速く読めるようにする方策――それは、一にも二にも、沢山読むことだと思いました。それも、なるべく立ち止まらずに一気に読む。知らない単語のひとつや二つは軽く読み飛ばし、先を読み進める。

 最初から難しい文章だとまた挫折しそうだと思ったので、まずは手頃なものからとりかかることにしました。

 わたしが最初に取り掛かったのは、センター試験の英語問題です。センター試験問題には仏検2級受検のときにもお世話になりましたが、今回も大変お世話になりました。大手予備校の河合塾が10年分くらいの試験問題および解答を、本試験のみならず、追試の分まで公開してくれています(筆記のみ)。

 まずはこれを10日ほどかけて、公開されている17回分を解いていきました。センター試験の難易度は毎回非常に安定しており、 英検準1級とは比較にならないくらい簡単です。 もしかしたら2級より易しいかもしれない。 なので精神的にラクで、サクサク楽しくはかどりました。

 スピードをつけたかったので、80分のテストをなるべく50分程度で解くようにしました。だいたい9割以上とれましたが、発音問題がもうボロボロ。一度くらい満点をとってみたかったのですが、ダメでした(涙)。まあ、いいんですけどね。英検では発音問題でないから。

 平易な長文を数多く読むことで、英文に慣れる効果は充分にあったと思います。英文を読む抵抗感が明らかに減りました。それに連れて読む速度も多少上がったように思います。

 本当はこのあともう少し難しい私大や国立の二次入試問題を解ければよかったのですが時間切れ。本番が20日後に迫っていたので諦めました。

少しは語彙も

 センター試験の過去問と平行して、少しは語彙もやろうと思い、 2級受検のときさんざお世話になった 『英検2級語彙・イディオム問題500』を引っ張り出してきてまたやりました。実はこれの準1級用も買ってあるのですが、そっちは怖くて本棚から取り出すこともできませんでした^^;。

 2級をとったのはもう4年も前のこと。単語もとっくに忘れているんじゃないかなと思ったのですが、 案外覚えているものですね。9割とれました。

 それから、たまたま家に 『もえたん(萌える英単語)』 というのがあったので(なんでそんなのがたまたま家にあるのかは不明)、2度ほど通しで読みました。

 これは、マニアな方には超オススメ(てか、もうご存知のはず)。オールカラーのすっごくカワイイ単語集です。誰が作っているのか、英語のテキストとしてはかなり怪しげですが、とにかく例文が笑える。 ひとつ例を挙げてみましょう。

However bald you may become, your head cannot glow by itself.
(いかにハゲでも、みずから発光することはできない)

もえたん(萌える英単語)

 ・・・ハハハハ・・・。 これなどは一般の方にも分かる例文ですが、アニメやゲームが元ネタの例文も多く、 いちいち出典がわかってしまうわたしって一体・・・と悩みつつも(意外とオタクなのかも(怖))、楽しく読めました。続き物のお話になっていて、一日の学習を終えないと物語の続きが読めない仕組みも良かったです。お話の続き読みたさに思わず頑張りました。全体的に2級レベルの単語が多いのですが、summon(召喚)など、この単語集で覚えた単語もいくつかあります。

 単語集といえば『私の英単語帳を公開します!』 もサラッとですが読みました(※絶版。でも中古が安いです)。これも基礎的な単語が多いのですが、あやふやな単語を再確認できてよかったと思います。

 要するに最初の10日ほどは2級対策のようなことばかりやっていたわけですが、基礎固めになったし、もっと難しいことに挑戦する前のジャンプ台になったようにも思います。結局、自分の実力を今よりはるかに高いレベルまで一気に引き上げようとしても無理なわけで、まずは現在の自分でも無理なくできるところから始めるしかないのかもしれません。

過去問――新しいのがいいとばかりは限らない

 とはいうものの、本番まであと20日足らず。 もう少しじっくりゆっくりレベルアップを図っていきたかったのですが、 そうもいかず、とりあえず過去問をやっていくことにしました。

 実は、過去問は山のように集めてありました。 過去問題集を4冊も買い込み、なんと6年分、つまり18回分! あーもう、なんで英検準一となると、こうも問題集を次から次へと買い込んでしまうんだか・・・。 自分でも呆れるばかりです。

 ところで。 過去問集は旺文社の『全問題集』や学研から『カコタンBOOKつき』が出ていますが、効率よく買うには、 最新版ではなく、ちょっと古い版を狙うのがオススメです。 なぜかというと、最新版は 英検の公式サイトから無料でダウンロードできる最新3回分の過去問題とかぶっているからです。 わたしはなるべく多くの過去問を解きたかったので、 収録されている問題が重ならないよう、それぞれ出版時期の異なる過去問題集を中古で探して買いました。 ここで探せます→全問題集

 センター試験と比べると英検準1級の過去問は難しく、最初はやるのが億劫でした。 ただでさえ難しいのに、リスニングの予習時間を除く80分でこなさなくてはならないので、なおさらでした。

 でも、いくつか解いているうちに弾みがついた感じで、予定していたより早く、 本番の1週間ほど前にはおおよそ終えることができました。

 ただ辛かったのは、これだけ頑張って解いたのに、力がついたように感じられなかったこと。長文を読むのはラクになりましたが、語彙問題の出来はさっぱり変わらず。過去問に出てきた単語で知らないもの・あやふやなものは何時間もかけて全て辞書で調べ、問題のコピーをとってそれに意味をびっしり書き込み、単語帳(マメ単)にもアンダーラインをひいたり書き加えたりして覚えるよう努力して、それなりに頑張ったつもりだったのに、相変わらずあてずっぽうを含めても半分しか合っていないのですから、もうガッカリ・・・。

 また、リスニングの出来が安定しないのが悩みの種でした。リスニングの出来は問題の難易度よりも自分のコンディションに左右されるようです。調子が良いときは耳が(それとも脳が?)英語モードになり、すんなり聞き取れるのですが、ダメなときには全然ダメ。日本語モードになってしまうといちいち日本語に直して理解する感じで、話すスピードについていかれない。英検のリスニングは、4ケタの年号やら時間やら細部の聞き取りを問うてくる仏検に比べると非常におおらかで、全体の大意さえつかめれば正解できるので、細かい部分を聞き逃してもそれほど焦る必要はないのですが、不調なときは焦りが焦りを呼び、パニック状態に陥ってホント、ダメ。

 平均すると8割以上とれていましたが、時々7割を割り込んでしまう。確実に受かりたい場合、平均値にはあまり意味がないんですね。最低でどれくらいとれるかが肝心、つまり 平均が高いことより、最低ラインが高いことが大事なわけです。

 しかもリスニングは全体の3分の1以上を占める合格の要、ここはぜひともコンスタントに7割以上をキープしたいところです。リスニングで確実に8割とれるなら、それこそ語彙問題なんか完全に捨ててしまえるのですが、リスニングで6割台をとる可能性があり、語彙が運まかせとなると、読解で満点をとれると仮定しても、全体で7割の合格ラインを死守するのはけっこうキツイ。

 ・・・とはいうものの、あと一週間で打つ手はあるのかというと・・・、ウーン、微妙です。

やっぱり最後は語彙問題

 リスニングに打つ手がないとなると、やはり最後の頼みの綱は語彙問題しかない。そこで、単語帳を作って今まで過去問で出てきた単語を書き連ね、覚えることにしました。

 でもこれはよくなかった。時間のあるときならともかく、試験直前にやるような作業ではありませんでした。ひとつひとつ辞書で調べ直したりして、類語や品詞の変化などを書いていったら、大変な大仕事となりました。丸2日机にかじりついて書きまくったのに、Aで始まる単語から始めてDまでしか書けてない! しかも、一度書いたぐらいではちっとも覚えない! このペースでいくと、書いただけで終わり、覚える時間など残らないと気づき、結局途中でやめました。

 単語帳作りに挫折した今、仕方がないのでおそるおそる、4年前に買い込んだ語彙問題集を引っ張り出してきました。『英検準1級単語・熟語・文法―15日間でらくらくクリア 』 というものです(現在絶版)。死蔵していた準一対策本3冊のうち、単語・熟語が難易度順に並んでいるこれが一番とっつきやすく思えたので、 寝転がりながら軽く読んでみることにしました。

 4年前同様、今回もさっぱりできない点に関しては同じでした。ただ、4年前と決定的に違っていたことがある。 なんとなくどこかで見たことのある単語が増えていたことです。意味は思い出せないけど、7、8割の単語は確かに見たことがある。「ウーン、ウーン」とうなって考えているうちに思い出せる単語もたまにありました。

 正解には到らずとも、こうなるとちょっとヤル気が起きるんですね。自分ができないという事実を目の当たりにするのが怖かったので、紙に書いてマルつけなどせず、 特に暗記しようと努力したりもせず、ただベッドに寝転がって答えを推測しながら読んでいただけですが、少なくとも読むのがイヤではありませんでした。

手製解答欄

 この本を読み終えると、語彙問題集をもう一冊、今度は真面目にやってみようかという気になりました。『英検準1級語い・イディオム問題ターゲット』です (※現在は改版されて『英検分野別ターゲット 英検準1級単語・熟語問題 改訂版』という名で出ています)。 大きな紙に問題数分の升目をビッシリ書き連ね、ひたすら解いてはマル付けをしました。全部でちょうど400題あるので、1問1分としても400分、7時間近くかかる。辞書をひいたりするので、実際はもっとかかり、2日かけて終わらせました。

 ここで驚いたのは、7割正解できたこと! 今までやってきたことが一気に花開いた感じでした。過去問をやっていたときはさっぱり見えなかった成果が、ここで突然見えてきたように思えました。

 また、ひとつ気づいたことがある。この本の初版は1997年発行で、わたしがやった2000年以降の過去問よりも前です。にもかかわらず、似たような単語、似たような問題がたくさん載っているのです。 この本をやっていれば、できたはずの過去問がたくさんありました。・・・てことは、この本をしっかりこなせば、本番でもとれるってこと?!

 準一級で必要とされる語彙数は7500と言われており、その膨大な数にビビッてどこから手をつけてよいのやら 途方にくれていましたが、実際に英検で問われる語彙は限られているのですね。辞書に同じ重要度としてランク分けされている語でも、問われない語と、何度でも問われる語がある。同じ使用頻度の語でも、たとえば鳥や魚の名前などはまず問われませんが、addiction(中毒)、diversity(多様性)、donation(寄付)、infection(感染)、immunity(免疫)、exploitation(搾取)などといった社会の諸問題を理解するのに必要な抽象名詞は、これからも手をかえ品をかえ、例文をかえ品詞をかえて出題され続けると見て間違いないでしょう。

 せっせと過去問をやりつつ、実は「過去問なんかやったって意味ないんじゃないか。一度出た問題がまた出ることはないのだから」と内心思ったこともありましたが、過去問を解いたのは無駄ではなかったと確信しました。また、過去問を中心に構成されている問題集をやる意義も確認できました。

 こうなると、俄然ヤル気が沸いてきました。これはもう問題集を信じてやるっきゃない。2度目は、別ページに書いてある4択の単語の意味を80づつまとめて覚え、答えの脇に書き写す、という作業をしました。

 3回目は本番の前日、今回は9割以上取れました。最後に一回分だけ残しておいた過去問も、リスニングが6割台と不調だったにもかかわらず、8割とれた語彙でカバーして全体で8割とれました。

 語彙問題は、ある程度できるようになると、安定して点数が稼げるんですね。リスニングや読解に比べて波が少ない。そういう意味で、やはり語彙問題は合否を決定する要と言えるのかもしれません。

語源学習

語源カード

 最後の3日間、問題集と平行してもうひとつ、語彙対策にやっていたことがあります。それは、語源ごとに単語を書き出す作業です。過去問や問題集をやるうち、語彙問題に出る単語はラテン語からの借用語が多いことに気づいたので、一度まとめておきたかったのです。それに語源を知っておくと、イメージしやすく、知らない単語でも意味が類推できることもあります。

たとえばprojectrejectinjectejectdejectinterjectsubjectobject などはどれも「投げる」という意味のラテン語 jacere に方向などを表す接頭辞がついたものからきており、

  • 前に(pro)投げれば「計画する」
  • 後に(re)投げれば「拒絶する」
  • 中に(in)投げれば「注入する」
  • 外に(e)投げれば「排出する」
  • 下に(sub)投げれば「支配する」
  • 間に(inter)投げれば「言葉を差し挟む」

 ・・・なんだか分かったような分からないような感じですが、こういうイメージで抽象的な物事は理解され、言葉が出来てきたんだなと思うと面白く、英語に興味が沸きました。

 結局、思いつくままにハガキ大の大きさの紙に100単元ほど作りました。本番試験の直前まで見ていたのもこのカードでした。先に挫折した単語帳作りとは違い、簡単なものでしたので、作るのに時間がかからなかったのがよかったと思います。まだまだ取りこぼしがたくさんあるので、これからも書き足して充実させていこうと思っています。この辺はラテン語からフランス語を介して英語に入ってきたのか、 フランス語と共通した単語が多いのも嬉しいところです。

試験当日

 会場は初めて訪れる場所だったので、少し時間に余裕をみて家を出ました。到着したのは45分くらい前だったでしょうか。こんな会場があちこちに山ほどあるのでしょうに、準1級受験者だけで3クラス分。さすがメジャーな英検です。

 次々と教室に入ってきたのは自分と同じ年恰好の女性ばかり。エッ、英検準一級ってそういう客層なんスか?! 大学生とかじゃなく??と驚きましたが、検定開始時刻が近づくと、高校生・大学生が続々と増えてきて、社会人はやはり少数派となりました。若者はまだ時間の余裕を見る大切さを実感してないってことですかね。

 ところで、英検って席決まってないんですね。それとも会場によるのかな? 席は早い者勝ち。わたしを含め、早くきたオバサンたちは皆、前の真ん中あたりの席に陣取ってゆく。若者はせっかく早く来ても、なぜか教室の後とか隅のほうから詰めていく。なんでだろー? リスニングのことを考えたら、音源に近いほうがいいのにね。謙虚なお子さまたちですこと。

 ひとつの教室に30人前後の受検者が揃いました。準一級の一次合格率は毎回15%前後。・・・てことは、これだけの人がいても、4、5人しか受からないわけです。4、5人かあ、どの人が受かるんだろ・・・と周りを見回してみる。

 真面目そうな女子高校生、この子はきっと受かるな。外人みたいなルックスの茶髪の女子学生、英語喋れそう~。隅っこのほうでふてくされてる男子学生、意外とこういう子がデキルのよね。となりの席の奥さんも侮れそうにない。

 ・・・なんて考えてたら自信がなくなってきちゃった。受かりそうな人ばっかじゃん! 落ちるの誰? アタシ?

 いやいや。短い間だったけど、わたしは本当によく頑張った。このひと月で、どれくらい勉強したかな? 100時間はやったな。150時間ぐらい? 特に最後の1週間は一日10時間以上やった。このひと月間に関していえば、ここに座っている誰よりもよく勉強したと思う。・・・そう、受かるのはわたし! わたしに決まってる。

 試験が始まりました。過去問をあれだけ解いても、本番ってやはり違うんですね。語彙問題、どうしても立ち止まって考えてしまう。考えたって知らないものは知らないのに。

 長文補充もいつもより時間がかかりました。一問のミスが命取りになるかもしれないと思うと怖くて、つい何度も見直してしまう。時間があるならそれでもいいけれど、これではあとが辛くなる。時間配分をすでに1、2分オーバー。

 長文では、時間も押していたので焦りまくりでした。特に、3つめの長文の1番目の問題にひっかかり、焦りの絶頂に。これはマズイ。とりあえずブレイクして英作文を先にやってしまうことにしました。

 採点ができず、実力が測れないのをいいことに、今回、対策らしきことは何もしなかった英作文。平易な表現で書くこと、スペルミス・三単元のsなどを忘れないことだけは肝に銘じたつもりでしたが、 本番ではどこへやら。時間がおしていたので、見直しもせず、書きっぱなしでした。

 第一、最初の挨拶と最後の締め・差出人の名前を忘れないように 一番上と一番下に最初に書き入れたものの、 本文が長くなりすぎて、最後の締めのセリフ(お返事待ってます、とか、敬具、とか)を消して書く羽目に。 意味ないじゃん! 「100単語前後で書け」とありましたが、枠内に収まったから、ま、いっか~、というノリで、単語数は、数えませんでしたが、もしかして150単語以上あったかも・・・。今にして思えばこれはまずかったかも。なにしろ、合格者の平均11点、全体平均でも10点という英作文が8点しか取れなかったのですから。

 英作で点を稼ぐなら見直しくらいはしたほうが良いと思いますが、英作を見直して1点2点余分に稼ぐより、他でがっちり稼ぎたかったので、英作の出来は・・・ま、しょうがないかな。

 また、読解でパニックしたので英作を先に済ませるというのはなかなかの気転だったと思います。英作を挟んだことで気持ちが切り替わり、落ち着いて問題文を読み直すことができたからです。結局予定通り80分で筆記を終わらせ、10分のリスニング予習時間をとることができました。

 リスニングも、いつもより焦り気味でした。折から降りだした雨の音と、ときおり襲うかみなりが気になって、集中力に欠けました。そんなに近くに落ちてるふうでもありませんでしたが、空に稲妻が走るとついビクッと身構えてしまう。これ、窓際だったらもっと気になったでしょう。音源の真ん前に席をとって正解でした。

まとめ

 やってよかったことも、いまいち無駄だったこともありますが、自分がやると決めたことはきちんとやったし、良い結果も出たので、万々歳です。準一を受けると決めてから一次試験当日までのひと月間、本当に大変でしたが、 語彙力を中心に、けっこう力がついた気がします。 わたしの場合、英検資格をとってなにをしようというのでもないのですが、 こんなわたしでもいざとなれば結構頑張れるんだと分かったのが嬉しかったし、 この機会に、たくさん英語に触れられたのは何よりでした。

 おりしも、ハリーポッター最終巻がもうすぐ出版されようという時期。前巻を日本語で読んだときから続きが気になって気になって、翻訳が出るのなんてとても待っていられないと思いました。とはいえあの長い物語を英語で読みとおすことができるのだろうか?と不安でしたが、英語を読む抵抗感をだいぶ感じなくなってきたので、これならもしかして読み切れるかも、と期待しています。

この記事は2007年に受験したときの体験を書いたものです。試験形式など、現在と異なる場合があるかもしれません。ご了承ください。書籍のリンクは、新版に貼り直してあります。

アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス
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