アラビア語

アラビア語は危険?

 アラビア語は、現時点では実際の学習者は少ないけれど、いつか学びたいとひそかに思っている、もしくはバクゼンと興味がある人の数は意外と多い言語のような気がします。なぜそう思うかというと、「アラビア語をやってるんだ」と話したときの相手の食いつき方がちょっと他の言語とは違うからです。

 「〇〇語をやってるんだ」と告げたときの聞き手の反応は、〇〇に入る言語の名前によって違います。

1. 英語の場合
「最近、英語やってるんだー」
「へえー、教材何使ってるの?」
「NHKのラジオ講座」
「へー、それってどう? 身につく?」
※ 英語に関しては誰しも良い学習方法を知りたがっているので話が弾む。
2. 英語以外のメジャー言語の場合
「最近、フランス語やってるんだー」
「へえー、そうなんだ。フランス語って難しい?」
※ 抵抗なく普通のことと受け取られるが、さして興味をもたれることもない。
3. 中堅言語の場合
「最近、インドネシア語やってるんだー」
「へえー、なんでまた? バリにでも行くの?」
※ とりあえず学ぶ理由を聞かれるが、はっきりいってどうでも良さそう。
4. マイナー言語の場合
「最近、☆〇▼語やってるんだー」
「それどこの言葉?」
「◆〇×地方の言葉」
「へー、そうなんだー・・・」
※ その言語に対するイメージがわかないため、反応に困る様子が伺える。
5. アラビア語の場合
「最近、アラビア語やってるんだー」
「えっ、そうなんだー。アラビア語ってあのミミズが這ったような文字? 難しいんでしょ? なんでまたアラビア語なんか始めたの? アラブって言えばオイルダラー? テレビで見たけど、ドバイってすごいね。でも治安はどうなの? 危険じゃないの? アラブに行くの? 大丈夫~? etc・・・etc・・・」

 「アラビア語を始めた」と告げると、こんなふうに矢継ぎ早に質問されます。バクゼンと興味があるのでしょうね。誰しもアラブに関するイメージと知識を総動員してこの話題に食いつきます。だから話がはずみます。たいていの人が興味を持って聞いてくれます。

 ただし、アラブというと総じてお金持ちでキンキラキンできらびやかで摩訶不思議、そして何か危険そうなイメージがあるようで、結局「なんだか心配」ということで話が終わります(汗)。

 どうもみなさん、アラビア語を始めた途端、テロに巻き込まれたり、砂漠で迷子になると思うみたいですね。アラブ世界がどの程度安全か危険かはわたしにも分かりませんが、少なくともアラビア語は学習者に噛み付いたりしませんし、勝手に呪文が発動して、一夜明けたら砂漠のど真ん中にいたとか、香辛料の香り漂うスークに佇んでいた~、なんてことも滅多に起こりません。アラビア語やったら、三段腹をさらけ出して激しく踊り狂わなくてはならない、ってことも、たぶんありません。アラビア語は本当は、英語やフランス語同様、きわめて安全でクリーン、遺伝子組み換え操作も行っていないオーガニック100%の言語であります。

 ただ一方で、「キケンな香り」がするからこそ、注目度が高いのです。「アラビア語学習」という「キケンな火遊び」に憧れる人も多いようで、電車の中でアラビア語のテキスト開こうものなら、周囲の視線、独り占めです。「なんだ、あの文字は? ペルシャ語か? アラビア語か? すごいな、あの人あんな文字が読めるのか?!」という声が聞こえてきそう(妄想?)。あー、人の注目を集めるって気持ちがいい♪ もお、これは一度やったらやめられないです(笑)。

 『アラビア語学校の日常』を読んでくれているのも、たぶんアラビア語学習者だけではないと思います。推測の域を出ませんが、ふだん全くアラビア語に興味のない人が「え? なになに、アラビア語? 何それ?」と思って読んでくれていることもあるのでないかと勝手に想像しています。私自身、多くの人がそのように興味を持ってくれればいいなと思って書いています。

 これが『インドネシア語学校の日常』だったらどうだろう?と考えると・・・。うわー、地味すぎて誰にも読んでもらえなさそう~~!

 そのイメージが正しいかどうかは別として、アラビア語のこの一種「キケンな感じ」は、学習者を遠ざける要因でもあり、学習者を引きつける魅力でもあります。このイメージがひとたびプラス方向に振れれば一気にブレイクする可能性があると思うのですが、いかがでしょうか。

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