英語

女子トーク

 DMM英会話での会話時間が一万分になりました。1万分を時間に直すと、約166時間。特別これといった目的もなく、ただなんとなく毎日続けている日課ですが、それでも、こういう日課が一つあると気が楽。他に何もしなくても、「少なくとも今日も外国語に触れた」と思えるからです。

 最近のレッスンは、トルコ語と英語に絞っています。トルコ語は現在、英語の初級日常会話教材をトルコ語に直して使っています。毎回、前課を復習しつつ、新しい課をやるという形で、レッスン毎に1課ずつ進めています。英語は上級ディスカッション素材中心。一度目はフィリピンの女の先生、二度目はボスニアヘルツェゴビナの男の先生と、相手を変えて同じ素材を二度やっています。40あるテーマがそろそろ終わりそうです。


 でも実は、英語で教材を指定するのは3回に1度くらいで、むしろ最近はフリートークが中心です。内容は、女子トークから社会問題までいろいろ。最近は話す先生が決まってきているので、すっかりお互い気心が知れ、話の盛り上がり方がハンパない。授業の初っ端からいきなりどどーんと盛り上がることもあります。

 たとえば先日は、スカイプが繋がった途端「どうしよう、どうしよう?! わたし、初めて男の人とデートしちゃった!!」と始まりました。

 こういう話はわたしも大好き! 「どうだった?」「何着てったの?」「どんな話したの?」と質問攻めにしました。先生も興奮してるから、すんごい早口。内容は簡単だけど、このスピードについていくのは結構ターイヘン。

 「それがね、他の生徒に相談したら、最初のデートはパンツがいいっていうから、そうしたの。・・・それでよかったと思う?」

 「うん、いいんじゃない。最初だし、あんまりフェミニンすぎないほうが正解かも」。

 「そっか。パンツでよかったのね。よかった~! でもね、公園のベンチで喋っていたんだけど、なんか、こう、肩とか触れてくるの。それって普通?」

 「・・・そりゃあ、男の子はあなたに触れたいでしょうよ。でもあなたがいやなら、次からもうベンチで隣同士に座るのはやめたら? カフェでテーブルを挟んで差し向かいで話せば、テーブルがあなたを守ってくれるよ」

 「えー!! そうか! それ気づかなかった! わー、相談してよかった! これ、今日もらったアドバイスの中で一番役に立つアドバイスだわ!」

 ・・・って、一体何人の生徒に同じデートの話をしているんだか(笑)。


 その三日後、次のレッスンで「その後、例の彼とどう?」と尋ねると、今度はいきなり、どんより暗い。

 「ああー、ダメかも。この人とは合わないかも」

 「昨日バーのパーティに一緒に行くって言ってたよね? 結局行ったの?」

 「それがね、相手の仕事が急に入って、行けなくなったの」

 「そっか、じゃあ会えなかったの?」

 「ううん、むこうの仕事が終わってから、マックで少し話した。でも、話して分かったの。全然人生観違うなあ、って。彼は旅行とか、自分のやりたいことをかなえるために貯金をしているんだって。でもわたしは、お金があったら、自分よりまず、家族のために使いたい。そういうところが根本的に違ってて。そういうのってどう思う?」

 「そうねえ・・・、彼は彼でいいと思う。そういう生き方もあると思うよ。でもあなたはあなたで正しい。どちらも間違っていないと思うよ。それぞれ自分の道を行けばいいんじゃない?」

 「あとね、もう一つ気になる点があって。これはどう思う? マックでハンバーガー食べ終わったら、耳元でささやくの」

 「何て?」

 「『自分の分は自分で払ってね』って」

 「・・・ハイ?!(笑) ・・・ごめん、ささやいたってどういうこと? つまり彼はそのセリフを他の人に聞かれたくなかったってこと?」

 「そうだと思う。でも割り勘って、普通?」

 「それ自体は悪くないと思うよ。うちの娘なんて、絶対男の子には自分の食べた分まで払わせないって決めてる。借りを作りたくないんだって」

 「へえー。そうか。じゃあそれはいいんだ」

 「んー、お互い自分の分を払うのは全然構わないと思う。でも、その、あなたにだけ聞こえるように囁くっていうのはなんかイヤだな。卑怯・・・とまでは言わないけど。気が小さいのね」

 「そう思う? あとね、別れ際にハグしようとするから思わず身を引いたら、『なんで? これは友達同士のハグなのに』って言うの」

 「あー、それ男がよく使う手だわ。でもフェアじゃないよね、そういう言い方。気をつけないと、次は『友達同士のキス』を迫られるかも」

 「ええー! 実は今朝、メールが来たんだけどね。わたしのこと、『キューティー』とか呼んでくるわけ。うわー、キモっって感じ!」

 「キューティー!!(笑) あーもう、完全にあなたを自分の彼女だと思ってるね、彼」

 「うっわー、やだやだ。どうやって別れよう?? ちゃんと伝えるべき?」

 「さあー、それはあなたがどうしたいかによるんじゃない? 一言伝えたほうが気楽ならそれもいいし、メールの返信をすぐには返さず、一歩ずつ退いていくとか?」

 「そうかー。考えてみる」

 その後、どうやらこの男性とは無事別れたようです。わずか一週間の恋愛事件でありました。


 しかし、あー面白かった。これは盛り上がったわー。

 盛り上がったときの会話って、自分と相手が同時に喋っているんですね。相手が言葉を全部言い終わらないうちに、こっちはもう次の質問を浴びせかける。興奮していると待てない。相手が完全に言葉を言い終えるまで、待てないんです。お互い、相手の言葉にかぶせてかぶせてかぶせて、延べ75分間、スカイプを挟み、東シナ海を挟んで、ワアワア喋っていました。

 ここに書いたのは、話したことのごく一部です。個人事情に関係のない当たり障りのない部分だけ書いたので、実際に話した内容よりも軽い印象になっているかも。

 でも本当は、いろいろ辛い人生経験もしている先生です。決して浮ついた子ではない。だから面白がりつつも聞くほうは真剣。真面目に思うところを伝えました。

 だって心配で。相手がもし良い人なら、チャンスを逃すことがないように。でも決して自分を安売りしないように。うちにも同じくらいの年頃の娘が二人いるので、完全に母親目線です。

 人と人との会話って、それが他愛もない女子トークであっても、そして外国語の会話レッスンであってさえ、それまでの人生経験を持ち寄る場なんですね。何気ない一言にもそれまでの経験が反映される。それが会話だと思う。

 むしろ、人間関係を損なってはならない場では怖くて言えない本音も、先生と生徒という適度にドライな関係、しかも海の向こうという、あと腐れのない距離感だと、安心して言える。下手な知り合いよりも、スカイプレッスンの先生方とのほうが、よっぽどお互いのことを分かっていると思います。

 わたしの英語には、きっとたくさん間違いがある。でも、曲がりなりにも、知りたいことを尋ね、思うところを表現し、相手と同じ思いを共有することができる。それは本当に幸せなことだと感じています。

 トルコ語ではまだとてもそんなことはできないもの。あれが言いたい、これも聞きたい、本当は先生と話したいこと、もっともっとたくさんあるのに、気持ちばかりが先へ行ってしまい、言葉がついていかない。

 英語で言える程度のことがトルコ語でも言えたらどんなにいいだろうと、いつも思います。

ナナカマド
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