英語多言語

「がまくんとかえるくん」にハマるの巻

 「がまくんとかえるくん(Frog and Toad)」にハマってしまいました。

「がまくんとかえるくん」は、アーノルド・ローベルの絵本シリーズで、日本でも小学校の国語の教科書に「おてがみ」という一話が掲載されています。主人公は、ひきがえるとがまがえるの仲良しコンビ。全部で20編のおはなしが4冊に分かれて出版されています。

 わたしも子どもが小学生の頃、教科書で「おてがみ」を一緒に読み、そのあと図書館で他の話も一通り読みました。でも当時は特別面白いとも思いませんでした。

 でも最近、英語で読み直したら、すごーく気に入ってしまった!! なんでだろう? 原文の英語が、気持ちのいいリズムを持っていたからかな? 繰り返しの多い単純で素直で素朴な英語が、なにかとても馴染める感じがしました。

 絵も気に入りました。ざらついたペーパーバックに描かれた、カーキと茶色のみで着色された黒い線画。その地味さが心地よかった。

 ・・・まあね、こうした理由はあとから考えたもので、本当のところ、なぜ気に入ったかなんてわからない。何かを気に入るのに理屈なんてないんですね。お話の持つ全体的な雰囲気が気に入った、というのが実際のところです。

 ストーリーは特別面白いわけではないのですが、まったりゆったりとして、どこか間の抜けた二人(二匹?)の雰囲気がとても良い。特にものぐさな「がまくん」はほとんど自分の分身に思えるほどで、がまくんがやることは、自分もやってみようと思う。がまくんが片付けものを始めると、自分も始めようと思うし、「今日やることリスト」を作れば、自分も作ろうと思う。実に教育効果の高い本です(笑)。

 最初は図書館で借りたのですが、いつも抱いていたいような気分になったので、思い切って購入しました。「思い切って」と言っても、なにしろペーパーバックですから、1冊300円ちょっと。シリーズ全部買っても1300円しませんでした。

 更に、朗読CDも購入しました。音読したらさぞかし気持ちがいいだろうと思ったのに、実際やってみたらちっとも上手に読めなくてイライラしたので。どういうふうに読めばいいのかが知りたかった。作者自身による朗読は、作品の雰囲気にとても合っていて、すっと馴染めました。間合いの取り方などから、自分で読んでいては分からなかった面白さを発見したりも。早速ipodに取り込んで、繰り返し聴いています(Audible.comで視聴できます)。

 また、ネット上で動画(The letter)も見つけました。アメリカだかイギリスだかでテレビ放映されたもののようです。これがね~、またいいんだわ!! 娘のちゃあに見せたら、「不気味~~!」の一言で一蹴されましたが、この不気味さがいいんでしょうが~。ちゃあに「ママ、またそれ見てるの?!」とあきれられるほど、これも繰り返し見ています。これまでに7~8話見つけましたが、一番の傑作は、やはり上記リンクの「おてがみ」です。

自製版「がまくんとかえるくん」

 それから、フランス語でも読みました。たまたま図書館にあったの! 4冊のうち、2冊だけですが。こちらは絶版で、購入できないことが分かったので、自分で作りました^^。ワードで文章を打ち込んで、スキャナで絵本の画像を取り込み、ノイズを消してワードに貼り付けました。

 1冊作るのに、丸々二日かかりましたが^^;、出来映えには満足しています。元のフランス語版よりも、むしろ出来映えが良い。フランス語版は文字が小さく、絵の色が妙に明るく浅いのが気に入らない。おまけに、絶対に間違えてはいけないところで、挿絵の順番が間違っている!! わたしが自分用に作ったのは、英語版に倣い、文字が大きく、絵もシックな色合いです。もちろん、挿絵の順番もバッチリです。

左が自製版、右が市販品

 あともう一冊、あるのだけれど、さすがに疲れたので、どうしよっかなー。そのうち作る元気が出たら、また考えます(笑)。

 ところで、フランス語と英語の文法は似ているので、文法をそのままに、単語だけ入れ替えてあると思いきや、様々な違いがあって、面白かったです。

 まず最初に気づいたのは、英語は過去形で語られているのに対し、フランス語は現在形で語られていること。最近のフランスの創作絵本は、現在形で語られていることが多いんですよね。昔話は伝統的に単純過去という時制で書かれるのですが、単純過去は文語で、子どもには難しすぎるからかな?

 でも「がまくん・かえるくん」でも一部だけ、単純過去が使われていた部分があります。それは、かえるくんががまくんに語って聞かせる物語部分。これがものすごくよかった。なぜならば、かえるくんが語る話というのは、たった今がまくんが経験したことだからです。現在形で今体験したばかりのことが、かえるくんの口から昔話の形式で語り直される・・・この面白さは英語では出せるはずもない味わいで、フランス語の特質に、原作者も悔しがったのではないでしょうか。

 また、英語で「かえるくんは〇〇しました」「かえるくんは〇〇しました」といった畳み掛けがリズムを生み出しているのですが、フランス語ではわざわざ代名詞で言い換えることに気づきました。なるほど、フランス語は同じ語句の多用を嫌います。そのルールが、子どもの本にも適用されているのですね。フランス語における代名詞の多用は徹底していて、わかりづらいときには、「後者の彼(celui-ci)」などという言い方までしてでも、一度使った固有名詞を避けているのが印象的でした。

 そこまで同じ語彙の重複を避けるにもかかわらず、動詞となると、英語で言い換えているところですら、フランス語では一つの動詞を使っているのが、これまた印象的でした。おそらく、一般的に使われる動詞のバリエーションが、英語より少ないからでしょう。・・・というか、英語の動詞が多すぎなんだと思う。同じ動作を言い表すにも、英語は、程度の差や、微妙なニュアンスの違いよって動詞を使い分けますものね。cry、yell、shout、scream… 日本語で「叫ぶ」にあたる動詞だけでも、一体いくつあるんだか・・・。


 「がまくんとかえるくん」のシリーズは、英語・日本語・フランス語のほかにも出ていて、今のところ、ドイツ語版(Frosch und Kroete)スペイン語版(Sapo y Sepo)の存在を確認しています。

 ドイツ語版は、20話全部が一つにまとまって1370円(12/14現在)と安いので、いずれ買うつもり。朗読CDも、秋・冬編春・夏編に分かれて出ています。でも、出版元のサイトで視聴してみたら(春・夏編)(秋・冬編)、一度聴いただけでは、どの物語なのかさえ、全く分からなかった;; 何度か聴いて、知っている単語を拾い、やっとどの話かくらいは分かりましたが、ドイツ語の出来なさ加減を痛感しました。とにかくボキャがあまりに貧弱。

 アラビア語の翻訳はあるのかどうか分からず、インドネシア語はないみたいです。ただ、英語版のfrog and Toadを紹介したページを見つけ、一話のあらすじがインドネシア語で読めました。どうやらドイツ語よりはインドネシア語のほうがまだ分かるようです。


 ところで、「Frog and Toad(英語)」以下、「Frosch und Kroete(ドイツ語)」「Sapo y Sepo(スペイン語)」「Kodok dan Katak(インドネシア語)」と、「かえるくんとがまくん」の名称で親しまれているこのシリーズ、唯一日本語では「「がまくんとかえるくん」と、「がまくん」が先に来ます。おそらく日本語では5文字7文字の収まりが良いからでしょう。「がまくんと/かえるくん」で5文字5文字になりますものね。「かえるくんと/がまくん」だと、6文字4文字で、おちつかない。

 また、フランス語版だけは、かえるくんに「Ranelot」、がまくんに「Bufolet」という名まえをつけて、「Ranelot et Bufolet」としています。Grenouille(かえる) et Crapaud(がま)じゃあ、いまいちカワイクないと思ったのでしょうか。

 スペイン語のSapo y Sepoとインドネシア語のKodok dan Katakは、もともと見事に対になっていて韻を踏んでいるので、そのまま名まえとして使うのがふさわしいですね。ただ似すぎていて、実際は紛らわしいかも??

 「がまくんとかえるくん」の物語は、主人公が人間ではないだけに、何語で読んでも違和感がありません。カエルのほかの登場人物(?)も、ヘビやかたつむりや小鳥で、どこの国でも見られるような風景。だから、なるべく様々な言語で読んでみたいです。

参考:各国語のかえるくんとがまくん (リンク先はAmazon.co.jp)

英語版:
Frog and Toad Are Friends
Frog and Toad All Year
Frog and Toad Together
Days With Frog and Toad
Frog and Toad CD Audio Collection CD(全20話)

ドイツ語:
Das grosse Buch von Frosch und Kroete (全20話)
Frosch und Kroete Unzertrennlich CD春夏編(全10話) 
Frosch und Kroete Dicke Freunde CD秋冬編(全10話) 

スペイン語:
Sapo y Sepo son amigos
Sapo y Sepo, un ano entero
Sapo y sepo, inseparables
Dias con Sapo y Sepo

日本語版:
ふたりはともだち
ふたりはいつも
ふたりはいっしょ
ふたりはきょうも

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