多言語

座っているのか座るのか

 今日またMondlyで面白い例文に出くわしました。

I sit in the chair.

Mondly

です。

I sit in the chair. の面白さ

 この文の面白さは、以下の二つの意味のどっちにもとれることです。

  1. 私は椅子に座る(腰を下ろす動作)
  2. 私は椅子に座っている(腰掛けている状態)

 実際、Mondlyにおける他の言語の捉え方はまちまちでした。

 I sit in the chair. 
 Я сижу на стуле. 
 他坐在椅子上。 
 أنا أجلس على الكرسي 
西 Yo me siento en la silla. 
 Je m’assois sur la chaise. 
 Ich sitze auf dem Stuhl. 
 Ben sandalyeye otururum. 
 Saya duduk di kursi. 
 私は椅子に座る。 

は「座る」という意味の文。
は「座っている」という意味の文。
はどちらともとれる文です。

 そこでノートには文を補い、以下のように書きました。

 私は椅子に座る。
  私は椅子に座っている。
 I sit in the chair.
  I sit in the chair.
 Я сажусь на стул.
  Я сижу на стуле.
 他坐在椅子上。
  他坐在椅子上。
 أنا أجلس على الكرسي
  أنا أجلس على الكرسي
西 Yo me siento en la silla.
  Estoy sentada en la silla.
 Je m’assois sur la chaise.
  Je suis assise sur la chaise.
 Ich setze mich auf den Stuhl.
  Ich sitze auf dem Stuhl.
 Ben sandalyeye otururum.
  Ben sandalyede oturuyorum.
 Saya duduk di kursi.
  Saya duduk di kursi.
(※ わたしは自分が女性なので、性の区別がある場合、女性形で書きます)

 このように整理し、それぞれの言語でこの二つをどう区別するのかを見比べると面白い。

 トルコ語日本語は、アスペクト(単純形か進行形か)で区別。

 フランス語スペイン語は動詞か形容詞(過去分詞)かで区別。英語で言えば、I seat myselfとI am seatedの違い。

 ドイツ語ロシア語は別の動詞を使う。

 格を重視するロシア語ドイツ語トルコ語では更に「椅子に」の格を変える。実は日本語もそうですね。見た目はどちらも「椅子に」ですが、意味的には前者が「へ」、後者が「で」。

 また英語でも区別する方法はありますね。

I sit down in the chair.(私は椅子に腰を下ろす)

I am sitting in the chair.(私は椅子に座っている)

 同様にインドネシア語にsedang、中国語に着をつけたりアラビア語で能動分詞にしたりすれば、区別しやすくなります。

 こういう違いは「座る」に限ったことではなく、他の動詞にも応用できるので、ここで違いを整理しておくと、後々役に立ちそうです。

自然さにこだわらない

 ところで、こういう短文にはいろいろつっこみどころがあります。

 「なんか不自然」とか「こんな文覚えても使わない」とか、それぞれ思うところがあるんじゃないでしょうか。

 とくにこれは現在形ですから、このフレーズをそのまま使うことはあまりないかもしれません。

 でもたとえばこれにeverydayをつけただけで、もう使う場面が思い浮かびます。毎日座ることに決めている椅子にある日誰かが先に座ってしまった。そんなとき「I sit in the chair everyday」と言えば、譲ってもらえるかもしれません。

 そしてこれを過去形にしたら、主語を変えたら・・・。使える場面はもっと広がる。

 だからわたしは例文それ自体の不自然さは全く気にしないんです。様々な応用が効くことが大事。多少不自然で使う場面が思い浮かばなかったとしても、シンプルで文法に則っていることが望ましい。

 第一「自然さ」の感覚って、想像以上に人それぞれです。日本語だってそう。外国人が複数の日本人の前で日本語について質問しようものならもう大変。誰もが自分の日本語が一番自然だと思っているから、やれ「こっちのほうが自然」だの「それは不正確」だの、どっちでもいいような瑣末な違いにケンケンガクガク大騒ぎ。当の外国人が白けて「もういいから」と言い出すこととか、もう「あるある」です。

 わたしはどの言語も、瑣末な自然さにこだわらず、システマチックに構築していきたいです。

上の文をNice translatorにかけたところ
言語によって捉え方はまちまち
曖昧でない文を与えると、かなりマシになる
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