英語

視点の違い

 昨日、すごくびっくりなブログ記事を読みました。

 ハローアカデミーの先生のブログに掲載されていた通訳案内士の合格体験記で、書かれたのは中国の方のようです。

 2015年度<合格体験記>(111)<合格祝賀会>参加希望者(中国語)

 5年かけてやっと邦文科目を揃え、2014年に初めて一次合格を果たしたものの、二次で落ちたそうです。

 ところがその予想される敗因がすごい。

 日本語でプレゼンをしたのだそうです。

 今年も日本語でプレゼンする気満々で300選を暗記していたところ、前日の模擬面接で先生に「日本語じゃなく、中国語でプレゼンテーションですよ」と言われて初めて気づき、今年ようやく合格を勝ち取ったのだそう。

 なんとも言えない気持ちになりました。いろんなことを考えた。

 まずは今年、試験前に気づくことができて、本当によかった。ほんと、危なかったですよね。もし今年も日本語でプレゼンをしてしまっていたら・・・。あー、模擬面接を受けて、本当によかった!

 でも昨年気づいていれば、もっとよかったのに・・・。

 試験官も、それくらい言ってやり直しさせてくれてもよさそうなものなのに。なんで言ってくれなかったんだろう?

 それとも、指摘されたけど、あまりに思い込みが強すぎて、スルーしてしまったのかな? 人は、あまりに自分の理解とかけ離れたことというのは、目にも耳にも入ってこないものだから。

 そもそもなぜそんな勘違いをしたんだろう?

 でもこの方の立場を自分に置き換えたら分かりました。

 たとえばアメリカに同じような通訳ガイド試験があるとして、それをわたしが受けたとしたら。一次試験は英語でさんざアメリカの地理や歴史について問われ、ようやく迎えた二次試験。当然、二次も英語・・・と思いますよね。まさか日本語で説明していいとは思わない。

 この方が遭遇した状況というのは、まさにそういうことだったんですね。

 ちなみに、二次試験の内容について記された紙にはどう書いてあったんだろう?

 引っ張り出し、読み直してみました。

受験者は、日本語によりテーマが書かれた配布された3つのカードから、30秒以内にテーマを1つ選択し、外国語でプレゼンテーションを行う。

 これでは勘違いするのも無理はない、と思いました。

 だってこの方にとっては、中国語ではなく、日本語が外国語なのだから。

 ・・・というか、それって本当に勘違いなのか? こう書いてある以上、外国人が日本語でプレゼンしても間違いではない気が・・・。

 おそらくここで言う「外国語」というのは日本人にとっての外国語、つまり「受験言語」が想定されているものとは思いますが、この書き方では外国人受験生が日本語でプレゼンしたとしても、受験者の落ち度ではないでしょう。

 こうした視点の違いって、つい見落としがち。「人によって視点は違う」と頭ではわかっていても、どうしても人は、自分の視点からしかモノを見られない。

 特に、道行く人のほとんどが、日本の両親から生まれた日本国籍の日本語話者である日本列島に住んでいると、つい日本人の視点に固定されてしまいます。

 「国語」=「日本語」、「外国語」=「日本語以外」と思い込みがち。でもそれは、唯「日本人にとっての視点」にすぎず、他の国の人にしてみれば、日本語は外国語なんですね。

 この方の体験記は、その不思議を、まざまざと体験させてくれました。

 自分が海外で日本語ガイド資格を取ると想像したのは、本当に面白かった。二次試験を日本語でやる・・・というのがもう、不思議すぎて・・・。

 外国語をやっていると、外国語にばかりに気をとられ、つい忘れがちですが、海外に出れば、母語が強みになるんですね。この方にとっては中国語、わたしにとっては日本語が強みになる。

 通訳案内士の試験会場では休み時間になると、ネイティブと思われる流暢な中国語があっちからこっちから聞こえてきます。

 でも邦文試験の難しさに阻まれ、受かる外国人はほんの一握り。韓国語、中国語の合格率が例年低いのは、外国人受験者の割合が高いからです。

 最近はまた少し傾向が違うようですが、古い過去問には日本で生まれ育ったかどうかを試すような問題がけっこうあります。

 たとえば「フジ、幸水、巨峰、とちおとめ」といった名前の中から、リンゴの銘柄を選ぶとか。

 童謡の歌詞のマッチングとか。「もしもしカメよ、カメさんよ」ときたら「世界のうちでお前ほど」、「まさかり担いだ金太郎」ときたら「クマにまたがりお馬の稽古」を選ぶわけです。

 まるで日本人かどうかを試す踏み絵みたい。日本で生まれ育ってきた人には簡単、そうじゃない人にはとてつもなく難しい。(でも日本人なら誰でも楽勝かと思いきや、娘たちにやらせたら、全然できなくて、びっくりでしたが^^;)

 こんな難関を乗り越え、見事合格されたこの方に、心からお祝い申し上げたいです。


追記: 忘れてた。今日はにゃんにゃんにゃんの日だった。ニャンコの画像、追加しておきます^^

グラナダ、アルハンブラにて
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