多言語

けちけち学習法

 「語学にお金を惜しんではならぬ」とよく聞きます。千野栄一の古典的名著「外国語上達法」にも、「語学上達に必要なもの:お金と時間」と書いてありますし、相原茂の「「<相原式>最大効果の中国語勉強法」にも「お金というのは情熱の代名詞」とあります。

 インターネットの普及により、音教材が安価(場合によってはタダ)で手に入るようになり、外国語学習のコストはここ20年で急激に下がりました。とはいうものの、全くタダで済ませられるかというと、そうもいかず、英語はともかく、マイナー言語になればなるほど、ある程度のお金は必要です。

 ただ「お金をかけたほうが、学習成果が上がるか」というと、これは人によるのかな、と思います。

 前述の相原先生は学生時代、高価な受信機を購入したことで、投資のモトを取らなければという心理が働き、学習意欲が増したそうです。

 でもこれを自分に当てはめて考えてみると、むしろ逆かもしれないと思います。「投資のモトを取らなければ」と焦るあまり、そのプレッシャーに負けて、逆に学習から遠ざかってしまう気がするのです。

 かつてわたしは大学入学時に5万円以上もするリンガフォンのドイツ語教材を親に買ってもらいましたが、30年経つ現在、まだ一度も聞いていない巻があります。この先も、たぶん一生聞かないでしょう。CDならともかく、カセットテープですから。聴かないうちに時代が変わってしまった。つまりリンガフォンにかけた5万はほぼ捨て金だったということです(パパ、ママごめんなさいm_ _m)。

 一方で、娘が塾で貰ってきたCDがきっかけで英検準1級に合格したことがあります。テキストがついていなかったので、500の英文を聞き取り「私製テキスト」を作ったのですが、その結果、英語力が飛躍的に向上したというわけです。タダで手にいれたものを活用するのって、なんだかものすごくお得な気がして、せっせと書き取りました。一種のエコ精神もありましたね。「縁あって我が家にやってきたものを、このまま活用せずに捨てるのは勿体ない」という。

 プレッシャーに弱いわたしには、プレッシャーを原動力にする「高額な投資」より、気楽な「ダメモト精神」のほうが、合っているようです。まあ、こんなプレッシャーに負けているようでは、もとより外国語習得は諦めたほうが良いのかもしれませんが、それでもプレッシャーに負けて何もしないより、プレッシャーのない世界で何かできるほうがまだマシ。・・・というわけで、エコ&ケチをモットーに(?)外国語学習を続けています。

 具体的にはまず、なるべくテキストを買わないようにしています。買って手に入れたテキストより、図書館で借りたテキストのほうがよく読みます。なぜならいずれ返さなくてはならないからです。期間限定だからこそ、手元にあるうちに必死に読む。必死にメモをとる。丸ごと一冊、最初から最後まで全部ノートに書き写す、なんてこともよくやっています。

 借りた本をどうしてもそのまま手元に残しておきたいときは、コピーをとります。A5版の本を2冊借りてA3の用紙でとると、10円で4ページ分のコピーがとれます。薄い本なら1冊あたり200~300円で全ページ手に入れることができます。

 コピーが良いのは、惜しげがないこと。数千円出して手に入れた本は汚すのに忍びなく、手を触れるのさえおっかなびっくり、まして書き込みなど相当の勇気が必要ですが、コピーだと惜しげなく気兼ねなく、好き勝手に書き込めて便利。結果として学習がサクサクはかどります。

 ページ数の多い本は、コピー代もバカにならないし、コピーするとかさばるので、なるべく中古で買います。これも、新品よりは気安く気兼ねなく使えます。

 但し、購入するのは一度全部読み終えたあと。買ってしまうと安心して読まなくなるからです。隅から隅まで読んで、どこに何が書いてあるかすっかり分かった状態で我が家にやってきた本は、何か分からなくなったとき、すぐに参照できて便利です。

 コピーであれ、中古であれ、基本的にお金をかけるのは、何度でも読み返したい本だけです。たとえばアラビア語なら「アラビア語文法ハンドブック」、インドネシア語なら「バタオネのインドネシア語講座 初級」、フランス語なら「新フランス文法辞典」。いずれもわたしにとってなくてはならない、バイブル的な存在です。

 唯一、辞書や単語集だけは迷うことなく買います。いつも手元に置いておきたいからです。マイナー言語になるほど辞書は値が張りますが、よくよく吟味し、価格は気にせず、一番気に入ったものを買います。気に入らないものを買うと、あとあと買い直すことになって結局ソンだからです。でも、気に入ったものが安く買える分には、中古でも全然構いません。インドネシア語、アラビア語、フランス語、ドイツ語、ロシア語・・・。けっこう辞書も中古で手に入れています。

 辞書以外でも、図書館で借りられない本を購入することもありますが、大事に扱い、読み終えたら売ってしまいます。読まない本をいつまでも家にのさばらせておくのは場所ふさげですし。売ったお金でまた別の本を買い、空いたスペースに置きます。

 投資をしたプレッシャーを原動力に学習を進める「資本回収型」と、お金をかけないことでプレッシャーを回避し、気楽に学習する「元本節約型」。どちらが合うかは人それぞれ性格によると思いますが、前述の相原茂先生の「お金でチャンスが買え、学習のよい環境が手に入るのなら、そこにお金をかけるのを惜しむべきではありません」という意見には、わたしも賛成です。

 我が家は4年前、今の住まいに転居しましたが、この家を選んだ理由の一つは、図書館から近かったからです。図書館が近い、よって本が借りやすいというこの環境は偶然ではなく、わざわざ買ったものなのです。そして、その環境を買うことができたのは、資金があったからです。いうなれば、なるべくお金を使わず、温存していた成果でした。

 お金はとてもフレキシブル。お金という形のままでとっておくと、いつか本当に欲しいものを見つけたとき、買うことができます。本当のチャンスが巡ってきたとき、ここぞと投資できるよう、どうでもいいことに関しては、これからもお金を惜しむつもりです。

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